■受け入れ拒否は理由にならず 再雇用契約の更新であっても
定年1年後の再契約の際に給与について、合意に至らず契約が更新されなかったのは違法と判断された事案です。労働者が労働条件の受け入れを拒否したとしても、会社が一方的に雇用契約関係を終了させることは、客観的に合理的な理由にも社会通念上相当な理由にもならないと判決は述べています。
■判決のポイント
被控訴人Xは高圧ガスを製造販売する会社に昭和60年に入社。労働組合を結成して書記長に就任しています。平成28年2月に定年となり、平成29年までの間の1年間、「賃金は暫定的に月額19万円、ただし、基本給と賞与については団体交渉で決める」旨の継続雇用契約を締結しました。
そしてXは平成29年3月以降も継続雇用契約を更新するとの申込をしましたが、平成29年2月28日までに労働条件の合意に達しませんでした。そのため控訴人であるY社は1カ月を猶予期間として、3つの案の労働条件を示し、提案に応じなければ契約の更新には応じられない旨を通知しました。
Xは雇用契約書に署名せず、Y社はXが雇用契約を作成しなかったことで、継続契約権を破棄したものとみなし、猶予期間による雇用契約を終了し、退職手続きをする旨通知しました。
そこで、Xは、Y社が契約を終了させたのは解雇に当たるとして①労働契約上の権利にあることの確認、②定年前の給与であった31万1554円の賃金の支払いを求め、訴えを提起しました。
原審は①については、3つの案が受け入れられないことで再雇用を拒絶することは、客観的に合理的な理由にも社会通念上相当な理由にもならないとしました。②については、契約期間中に給与額を変更する定めが作られなかった以上、19万円の契約であるとしました。
本判決は一部を修正したものの、原審を踏襲。XとY社は平成29年3月1日以降、本件継続雇用契約と同一の内容で解約が更新されていたとしました。
②についても原審同様19万円と判断しました。
■判決の要旨 給与変更の合意がない 契約額の以上は請求不可
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