水曜日, 12月 4, 2024

巨大開発から古里守りたい

■浅賀きみ江さん(リニア新幹線を考える相模原連絡会代表) おんな流 おとこ流~仕事を訪ねて~(55)

「リニア賛成、反対とかそういう単純な発想じゃなくて、リニア工事によって何が起きているのか、事実を見て」と訴える浅賀さん(2023年7月3日、相模原市緑区の相原高校跡地の校門前で、左奥に見えるのがクスノキ)

東京・品川―名古屋間を最高時速500キロ、最速40分で結び「夢の超特急」と喧伝されるリニア中央新幹線。全体の約86%を占めるトンネル掘削による大井川の水減少や南アルプスの自然破壊、膨大な残土の行方など、国の工事認可前から警告されていた問題が次々と露わになり、2027年開業が絶望的になったどころか新たな目標さえ示すことができない。(井澤宏明)

神奈川県相模原市には、静岡県を除く4県に設置される中間駅のひとつ「神奈川県駅」(仮称)が建設される。JR東日本と京王電鉄の橋本駅前には、地下駅が入る長さ約380メートル、幅約100メートル、深さ約30メートルの巨大な穴がぽっかりと口を開けている。

今年6月には、この穴から掘り出された土砂を積み上げた仮置き場に、工事現場が見渡せる「さがみはらリニアひろば」が開設され、親子連れのコメントが新聞紙上で好意的に紹介された。

このニュースに憤りを隠せないのがリニアトンネルルートから100メートルも離れていない同市緑区東橋本に住む浅賀きみ江さん(73)だ。2012年3月に結成した「リニア新幹線を考える相模原連絡会」(リニア相模原連絡会)代表として、リニア工事によってすっかり様変わりしていく町の姿をつぶさに見つめてきた。

現在、巨大な穴が掘られている土地には19年3月まで、県立相原高校が歴史を刻んでいた。畜産や食品製造、造園、園芸、ビジネスなどを学ぶことができるユニークな専門高校で、橋本駅の目の前という便利さもあって県内各地から生徒が通っていた。

緑豊かだった相原高校の中庭(2016 年11月12日の市民散策会で)

同校は1923(大正12)年、県立農蚕学校として開校。その年に発生した関東大震災で被災した横浜市に、生徒たち50人余りの自転車隊が農場で収穫した野菜を届けたというエピソードは今でも語り草だ。

校内の並木道は市民が通り抜けできる憩いの場。秋にはコスモス畑で花を摘む市民の姿も見られた。生徒が育てる牛、豚、ヤギやポニーは子どもたちの人気者。学校で生産した「相原牛乳」「相原ポーク」「相こっこ卵」や野菜は市民に販売された。広域避難場所にも指定され、2011年3月の東日本大震災でも、多くの帰宅困難者を受け入れた。

■子どもたちの古里

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