■減額ないとの期待に合理性 改定が教員間で不均衡を生じさせた
1年契約で20年間教員として勤務した大学教員の年俸が給与改定の結果、60歳以降大幅に減額に。減額されることはないとの期待に合理性を認め就業規則不利益変更の問題として判断しました。特定の職員のみ減額が大きく、代替措置や経過措置、組合との交渉が不十分で、合理的な改定内容ではなく、無効と判断しました。
■判決のポイント
本件は、60歳を超えた有期雇用者の年俸減額である点に特徴があります。
原告である大学教員は平成12年に講師として採用。契約更新を繰り返し20年間にわたり教員として勤務し平成29年には教授に昇進しています。
本件の規定は平成27年から適用され、60歳を超える教員の年俸は60歳に達した日を含む契約期間の年俸の80%とし、60歳以降は昇給をしないとの改定でした。その結果、原告の年俸は、平成26年4月1日には、728万400円だったものが582万4800円と145万5600円の減額となりました。
1審も本判決も、有期雇用契約を実質的に無期雇用契約と評価した上で、就業規則の不利益変更を定めた労契法10条の枠組みで判断。一審判決が不法行為の成立を否定しましたが、本判決では、従前の給与基準で年俸が下がることがないと期待したことに合理性があり、労働者の不利益は大きく無効と判断しました。
有期雇用教職員の人件費を削減する必要性は相当高かったと認めながら、減額に伴う不利益緩和のための経過措置や代償措置がとられていないこと、原告の学部で勤務を続けてきた教員にのみ一挙に大幅な減額を行うものであり、また、60歳に達する時期で年俸に大きな違いを生じさせる結果となっていることから教員間に不均衡を生じさせていることも指摘。
特定の有期雇用職員の年俸を大きく減額しているにもかかわらず、不利益に見合う措置がとられていないので、労働契約法10条にいう合理的な改定内容とはいえないと判断しました。
■判決の要旨 60歳に達する時期の違いで 大きな差異生じる結果に
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