失業時のセーフティネットのあり方をめぐり、雇用保険制度見直しの議論が進んでいる。政府が旗を振る「成長産業への労働移動」に向けた労働市場改革の動きが強まるなか、パートや学生アルバイトなど非正規雇用への適用拡大をどう進めるかが焦点となっている。失業時の所得補償だけでなく、再就職支援も担う制度見直しの行方について、諸外国の現状も踏まえて探る。
■再就職支援、欧州では計画策定や対面も重視
日本の雇用保険の適用要件は、主に①31日以上の雇用見込みがある、②週所定労働時間20時間以上の2点であり、要件に満たない短期契約あるいは短時間労働者は適用除外とされている。
制度見直しに向けた厚生労働省の雇用保険制度研究会では、適用要件や認定プロセスについて欧米との比較も議論されている。労働政策研究・研修機構の「諸外国の失業保険制度のオンライン化に関する調査」(2023年5月)によれば、米英独仏および韓国の5カ国のうち適用要件として労働時間や雇用契約期間を定めている国はなかった。
失業認定のプロセスで特に欧州諸国で特徴的なのは、求職者に個別に就職支援のための計画を策定し、失業認定とともに支援を進めている点だ。
例えばドイツでは、雇用エージェンシーと求職者のカウンセリングにより、取組み内容や計画を定めた統合協定(EGV)を締結。またフランスでは、再就職活動の指針となるPPAEに沿って職員との面談などを実施。毎月1回求職活動の状況をサイト上で更新するほか、必要に応じて定期的な面談も実施している。
認定手続きのオンライン化をめぐっては、各国で対応は様々だ。米国は全プロセスをオンライン化するが、ドイツ、フランスは失業後の初回面談は対面が原則。イギリスは、申請はオンライン化する一方で毎回の認定面談は対面とする。求職活動の促進に、対面が有効であるという考え方も背景にあるようだ。
日本では4週に1度の認定手続き時にハローワークに来所し就労活動などの確認を受ける形だが、5月に公表された同研究会の中間報告では、欧州の事例を踏まえ「個別的に就職支援の計画を立てて認定時に確認することも考え得る」との意見も出されている。
■コロナ禍の学生バイトを教訓に
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