■新・働く人の心と体の心理学 第56回 著者:深沢孝之
不安はメンタルヘルス悪化の元凶
ずっと以前から現代社会は「不安の時代」といわれていました。不安という感情そのものは、人類は太古から持っていて、おそらく哺乳類にもあると思われます。不安を感じることで生物は危険に対して警戒モードになります。「なんとかなるさ」と楽天的なシマウマやキリンがいたら、とっくにライオンに食べられて絶滅していたことでしょう。その意味では、不安は生存に役に立つものです。
しかし現代人は、常に不安にさらされていると感じています。不安定な経済や先行きの見えない生活環境、競争的で居心地の悪い職場環境など、不安になるきっかけはたくさんあります。不安を感じると人は、その解消に動きます。そこを狙って、企業は「あれが足りない」「これを買えばあなたは安心」とCМで煽っては、消費を迫ります。
私のような心理臨床家や精神医療関係者は、不安のコントロールができなくなった人たちを相手にしているといえます。不安が高まりすぎて、その対策として過剰な掃除や確認をしてしまう人や社会に出ることに恐怖を覚えてひきこもったり、アルコールやゲームなどに依存してしまう人たちなどがいます。このように、不安は扱いが難しく、とても厄介なものです。
なんとか社会がもっと明るく、未来に希望を持てるようになってくれるといいのですが、現状を見る限り難しそうです。何より、社会体制を作る側、権力者側に不安を利用しようという根深い動きがあるらしいからです。それを「ショック・ドクトリン」といいます。
不安、恐怖で人々を動かすショック・ドクトリン
この情報へのアクセスはメンバーに限定されています。ログインしてください。メンバー登録は下記リンクをクリックしてください。