■処分取消しは免れない 固定残業代が有効ではないので
トラック運転手が長時間労働の結果、狭心症を発症。労災保険から休業補償給付が支給されるようになりましたが、その日額の計算方法である「通常の労働時間の賃金」が問題に。固定残業代を有効なものとして平均賃金を算出しているのは違法であるとし労基署の処分取消しを求め、その主張が認められました。
■判決のポイント
トラック運転手として運送業務に従事していた原告が長時間労働の結果、疾病を発症。労災が認められましたが、固定残業代の支払いを有効なものと扱い、休業補償給付の日額を計算されたことを不服として、国に対し取り消しを求めた事案です。
争点は、休業補償給付の給付基礎日額の算定のなかに固定残業代相当の額が含まれるかどうかです。労働条件通知書には基本給14万1800円、評価給1万6800円、運行時間外手当14万9900円との記載がありました。運行時間外手当という固定残業代の部分が割増賃金に当たらなければ「通常の労働時間の賃金」になり、運行時間外手当を給付基礎日額の算定基礎賃金に参入することになります。
本判決は、「使用者が労働者に対して労基法37条の定める割増賃金を支払ったとすることができるか否かを判断するためには、その前提として、労働契約における賃金の定めにつき、通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要である」と前置き。そのためには、労働契約書の記載内容ほか、手当や割増賃金の説明、実際の労働時間の勤務状況などの事情を考慮して判断すべきとして検討しました。
基本給が昇給すれば、固定残業代が減額となること、基本給に相当する部分を時間数で除すと最低賃金を割り込み、大型運転免許とフォークリフト免許という特殊な免許を持つトラック運転手である原告の時給としては明らかに低額にすぎるとし、無効な固定残業代を有効と算出している労基署の方法は違法としました。
■判決の要旨 基本給と時間外手当が同額 割増賃金部分を判別できず
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