日曜日, 5月 5, 2024
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救急救命医師に対する配転命令は 地方独立行政法人市立東大阪医療センター事件(令和4・11・10大阪地裁決定)

■権利濫用なら無効となる 業務上の必要性もなく不利益も大きい

救急救命医師への配転命令を無効とした裁判。使用者は業務上の必要性に応じ勤務場所を決定することができるが、権利の濫用がないことが前提として検討。配転命令により資格更新に支障が生じるなど、労働者が被る不利益は大きく、権利の濫用であり配転は無効であると判断しました。

■判決のポイント

救急救命センターに勤務していた医師が、医療センターへ異動。専門医資格に必要な手術数が医療センターへの異動により少なくなり、技量が低下し配転命令により被る不利益は大きいと医師は主張し、配転前の職場に戻すよう、求めました。

判決は、救急救命センターの役割や医師の資格を考えても、医師の勤務場所と職務内容についての合意が存在するとしました。

配転命令については、「使用者は業務上の必要に応じ、その裁量により労働者の勤務場所を決定することができるというべきである」と使用者の裁量を認めつつ、「労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものでなければ、権利の濫用ではない」との最高裁判決(東亜ペイント事件、昭和61・7・14判決)から、権利の濫用があるかどうかを検討しました。

配転命令の理由として使用者が主張した原告の不適切な言動について、処分や注意指導した形跡がなく、業務上の必要性が足りないこと、医師不足の救急救命センターからの異動に業務の必要性はないことなどを指摘しました。

配転命令権を濫用したものと認めつつ、現状が続けば、外科専門医の資格更新に必要な数の手術に従事できないおそれがあるとも指摘。「外科医、緊急科医としての技能、技術については、臨床の現場で患者に対応し、処置や手術を行うことによってこそ維持されるものと推認できる」とした上で、「配転命令により債権者が被る不利益は、通常甘受すべき程度を著しく超えるものと認定することができる」と判断しました。

■判決の要旨 使用者裁量で決定できるが 無制限には行使できない

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