■費用の性質によっては制限 携帯端末は合法でコピー用紙は違法
生命保険の営業職員が携帯端末使用料やコピー用紙トナー代などが賃金から控除されていたことについて違法と主張。判決は、賃金控除は自由な意思で合意する必要があるが、費用の性質によっては合意が制限されるとし、携帯端末使用料については合意を認め、コピー用紙等の費用控除を違法としました。
■判決のポイント
生命保険会社の営業職員である原告は会社との間で、携帯端末料金金等の営業活動費用に関する賃金控除に関する協定を締結していました。
原告は、協定の内容は本来、使用者が負担すべきものを労働者に負担させており、賃金全額払いを規定した労基法24条に違反し無効と主張。117万円余の返還を求めました。
判決は、24条の但し書きには、労使協定があれば、労働者が当然に支払うべきものとして賃金控除を認めているのだから、労働者が当然に負担すべきものや、労働者の自由な意思に基づいて控除に同意したものであれば同条に違反しないが、費用の性質によっては合意が制限されるとの判断の枠組みを示しました。 労使協定があっても、控除の対象が、使用者から義務付けられ、選択のない営業活動費である場合には、自由な意思に基づく合意とはいえず、許されないと述べています。
この点、携帯端末使用料については、利用が推奨されてはいたものの、これを用いなくても営業活動が可能であったこと、貸与申込書に原告の印章があることや、原告が長い間使用し続けていたことから、給与引去りの方法から支払う旨の合意をしたと認められる、と判断しました。
一方、コピー用紙などは営業職員が判断に応じて注文するのではなく、コピー利用料の多寡にかかわらず、「募集資料コピー用紙トナー代」として定額で全営業職員に一律に課される負担金であることを重視。「賃金全額払の原則の趣旨からすれば、その有効性を認めることも困難である」として、合意の成立を否定しました。
■判決の要旨 選択の余地がなければ 自由な意思の合意ではない
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