大手会計事務所アーンスト・アンド・ヤング(EY、本部英国)がこのほど発表した職場でのAI利用に関する調査によれば、回答者の88%が「何らかの形でAIを使用」しており、37%は「日常的に使用している」と回答した。一方、AIの導入を高い価値創出につなげるポイントとなる「人材優位性」が構築されている組織は28%にとどまった。調査は2025年8月、29カ国の1000人以上企業に勤める従業員1万5000人とビジネスリーダー1500人を対象にアンケートで実施した。
調査回答者の88%が何らかの形でAIを使用し、使用率はエッセンシャルワーカーで80%、ナレッジワーカーで94%、リーダーや管理職ではほぼ全ての人が活用していた。他方でAIを「日常的に使用している」と回答した割合は37%で、部門ごとに大きなばらつきがあった(表)。

また、情報検索(54%)や文書要約(38%)など基本的なタスクへのAI活用が広がるなか、複数のツールを組み合わせたり思考のパートナーとして業務変革に活用するなど、週に約1.5日分の生産性向上を実現している上級ユーザーは5%にとどまっていた。
調査は、AIの導入を高い価値創出につなげる組織のポイントとして「人材優位性」に着目し、その構築に不可欠な要素として、①適切な人材獲得と定着のアプローチ、②大規模なAI導入の推進、③継続的な学習を日常業務に組み込む仕組み、④組織文化と職場規範の再構築、⑤新たな行動や成果に整合したリワードの設計――の5つを抽出。こうした体制を整えている回答企業の割合は28%だった。

調査は、安定した人材基盤のもとでAIを活用することで、社内の生産性を最大40%引き上げる可能性があるとした。
EY GlobalのKim Billeter氏は「AI導入の『人』的側面に向き合うことが喫緊の課題。AIが職場のあり方を再定義するなか、リーダーは人材健全性と効果的なテクノロジー活用の両方をサポートする組織文化を構築する必要がある」と指摘している。


