■会社側の言動を評価 雇用継続の期待高くない
カフェチェーン店で13回にわたって契約が更新された結果、契約期間が4年7カ月に及んだ労働者の雇止めが争われた事件。判決は、勤務態度が改善しなければ雇止めの可能性があることを会社が伝えていたことを評価。勤務態度も加味し雇用継続の期待が高いものとはいえないとして、雇止めには理由があるとしています。
■事件の概要
原告は平成31年4月、カフェチェーン店であるプロントでアルバイトとして勤務を開始。配膳やホール業務を担当します。会社はドリンクが作れるよう繰返し指導しましたが、習得せず職位も低いままでした。その間、「ものにならなければ5月25日の更新で契約満了になることを頭に入れて必死でやってください」との指導も受けています。
パスタのテイクアウト容器が欠品した際に、かわりにドリンクカップに入れることを提案するといった接客対応を客から指摘されたり、女性スタッフにスリーサイズを尋ねるなど他のスタッフからもクレームがありました。
契約期間が5年になる直前の令和5年10月4日、会社は11月25日の契約期間満了で契約の更新を行わないことを原告に伝えたところ、原告は労働契約法19条により契約は更新されたとして、雇止めは無効であると訴訟を提起しました。
労契法19条は、有期労働契約は期間が満了すれば終了するところ、契約が反復更新されていて、実質的に期間の定めのない契約と変わりのない状態であれば、正社員の解雇のような「客観的に合理的な理由が必要」との解雇規制が適用されるというものです。
そのためには要件があり、同条1号が実質的に期間の定めのない労働契約と同視できる場合、2号が契約更新に期待することについて合理的な理由があることと規定しています。そして、会社が更新を拒絶することが、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」ときは、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の条件で契約が更新されたとみなすと規定しています。
簡単な例で考えれば契約更新の手続きを怠っていたり、「ずっと働いてほしいといった言動」によって契約更新を期待させていた場合には、無期社員同様の解雇規制を受けるというものです。
本件でも原告は、契約更新は形骸化していた、契約更新の期待があったと主張しています。

■判決の要旨
判決はまず1号に該当するかについては、労働契約が13回にわたって更新されその期間が通算4年7カ月になるものの、契約更新のつどに契約書を作成しており、更新手続きが形骸化していないので、「本件雇止めが期間の定めのない労働契約を締結している労働者に対する解雇の意思表示と社会通念上同視することができるとはいえず、本件が労働契約法19条1号には当たるとは認められない」としました。
19条2号に該当するかについては、勤務態度が改善しなければ雇止めの可能性があることを明示的に伝えられていたことを重視しました。
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