土曜日, 7月 19, 2025
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店舗の閉鎖に伴う整理解雇は ACラーニング事件(令和4・8・17東京地裁判決)

■他の事業含め判断すべき 解雇回避努力も足りない

英会話スクールを運営する会社がコロナウイルス感染症の影響で売上げが減少し、業績の悪い店舗の閉鎖に伴い原告を整理解雇。判決は整理解雇の4要件を精査し、人員削減に当っては整理解雇が必要な店舗だけでなく、他の部門の状況も含めて判断すべきで、解雇回避努力も足りない旨述べ、解雇無効と判断しました。

■事件の概要

原告は英会話スクールを運営する会社との間で期間の定めのない雇用契約を締結。英会話講師等の業務に従事する台湾国籍の外国人です。

入社は平成30年で、会社は令和2年5月1日、解雇する旨を意思表示します。同月15日に交付した解雇理由通知書には解雇理由として「新型コロナウイルス感染拡大の影響により業績が悪化し、所属店舗が閉鎖となるため」の記載がありました。

被告は令和2年にB町にも店舗を新設することを予定していましたが、英会話スクール事業の売上げが減少。新型コロナウイルス感染症の情勢や売上げの減少傾向を踏まえ、2店舗のうちB町は店舗が好立地で、また新規工事に相応の費用を費やしていたことから、原告が勤務していたA町の店舗を閉鎖することにしました。

被告は整理解雇の有効性を主張するなかで、A町の店舗を閉鎖することとしたためスタッフが余剰人員となったこと、広告費等の経費削減やオンライン英会話を試行し、配置換え検討などの相当な解雇回避努力も行ったこと、さらに原告は日本語能力が不十分で、業務に必要な能力も異なる他の事業部への配置換えはなかったので解雇したと述べています。原告が閉鎖された店舗の専属スタッフであったとも主張。通訳同席の面談で説明を行っており手続きも相当と反論しました。

■判決の要旨

判決は、整理解雇は「一方的にその収入の手段を奪い、労働者に多大な不利益を及ぼすものであるから、当該解雇が解雇権を濫用したものとして無効であるか否かは、人員削減の必要性、解雇を回避するための努力、解雇対象者の選定の合理性、解雇手続きの相当性に関する諸事情を総合考慮して判断するのが相当」として検討しました。

A店舗閉鎖までの売上げが減少傾向にあったこと、B町の店舗ではなくA町の店舗を閉鎖することにした経緯などを認めつつ、「被告は英会話スクール事業のほかに行っている事業があるにもかかわらず、全社的な財務資料及び組織図等の人員体制の分かる資料の提出をしなかった。したがって、店舗を閉鎖することとした被告の判断の合理性、余剰人員の発生の有無、その削減の必要性の有無や程度を具体的に認定することができない。英会話スクール事業のみの利益・売上げその他の状況のみでは、これらを肯定するには足りない」と指摘。

さらに原告がA町の店舗の専属スタッフであったとの会社の主張に対し、勤務地としての本社の住所の記載やB町の店舗のシフトに原告が配置されていたことを証拠とし、会社の主張を真向から否定しました。


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