■重要事項の決定関与せず 米国親会社が具体的に指示
外資系企業の経理課長の管理監督者該当性が問われた事件。判決は多数の業務で親会社が具体的な指示を行っていたことを指摘。管理監督者としてふさわしい責任と権限が与えられていないので高額な賃金を得ていたとしても管理監督者に該当しないとして、原告の割増賃金の請求を認めました。
■事件の概要
原告は、被告である眼内レンズの開発と販売を行っている外資系企業に経理課長として従事しています。労基法41条2号の管理監督者に該当しないとして、平成28年6月から令和元年11月までの期間の時間外労働、深夜労働及び休日労働に対する割増賃金の不払いがあると主張。訴訟を提起しました。
原告は業務委託契約を経て、平成28年に雇用契約を締結。経理業務全般を担当しており、雇用契約記載の業務ほか経費精算の承認など多岐にわたる業務を行っていました。
一方、経理課従業員の労務管理のマネジメント業務を行っていた時間はわずかでした。被告と米国親会社との間で決済を受ける必要がある事項が決められており、経理業務についても米国親会社が具体的な指示を行っていました。採用にも親会社が指定した転職エージェントを介して行う必要がありました。
フレックスタイム制が採用されており、原告は被告に対し出社と退社時刻を申告。コアタイムに欠勤するときは半休取得を求められたり、年次有給休暇の申請も社長の承認を得ていました。原告の給与は年収1080万円ないし1170万円で、役員を含め7番目に高額でした。

■判決の要旨
判決は労働時間や休憩及び休日に関する労基法の規定を適用しない管理監督者に該当するかについて、「①事業主の経営上の決定に参画し、労務管理上の決定権限を有しているか、②自己の労働時間についての裁量を有しているか、③管理監督者にふさわしい賃金等の待遇を受けているかといった視点から、個別具体的な検討を行い、これらを総合考慮して判断するのが相当である」とし、「組織」「原告の業務内容・権限」「経営会議への参画」「採用等」「人事考課」「業務の割当て」「労働時間の管理」「勤務態様」「賃金等の待遇」を検討しました。
原告が経営上の決定に参加したり労務管理上の決定権限を有しているかについては、多数の業務で米国親会社の承認を受ける必要があることを指摘。経営に関する重要事項の決定に対する原告の関与の程度は大きいとはいえないこと等から「経営への参画状況からみて、原告が被告の経営に関する重要事項の決定に大きく関与していたとはいえない」と判断しました。
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