■おんな流 おとこ流~仕事を訪ねて~(72)

岐阜県中津川市福岡に住む野田契子さん(79)が自宅から約300メートルの至近距離に産業廃棄物中間処理施設建設が計画されているらしいことを当事者の住民K氏からほのめかされたのは、2010年1月のこと。(井澤宏明)
この住民K氏は廃品回収業を営んでいた。廃タイヤを焼却する際のノドをつくような強い臭いや黒煙のスス、野ざらしにされたタイヤから大量発生する蚊などで、野田さんや近隣住民は迷惑していたが、「近所のよしみ」で抗議はしてこなかった。
「何か新しい事業を始めようとしているのだろうか」。胸騒ぎを覚えた野田さんが市や県の出先機関に矢継ぎ早に駆け込んで分かったのは、産廃中間処理施設の設置許可が09年11月、県から下りていたことだった。
県の担当職員によると、K氏からは「住民の皆さんには説明し、承諾を得ていると聞いている」という。前回の記事に記したような事情で町内会に入っていない自分だけが知らないのだろうか。
職員に教えられるがまま初めて行った情報公開請求で公開された資料に、その「カギ」が隠されていた。町内会長の「承諾書」1通が綴られていたのだ。さらに調べると、他の2人、つまり歴代計3人の町内会長の承諾書が見つかった。
■町内会長の「承諾書」
歴代町内会長の証言によるとことの顛末はこうだ。07年4月に開かれた柏原地区の町内会常会でK氏から「今までのタイヤ焼却施設は悪臭、煙などで迷惑をかけてきたが、新施設は大幅に改善されるので承諾してもらいたい」と説明があった。
「産廃中間処理施設」だという説明は一切なかったが、現状が改善されるならと反対の声は出ず、当時の町内会長は承諾書に署名・捺印。後の2人も「既に承諾してもらっているので」という説明を鵜呑みにして署名・捺印してしまったという。
ところが県から公開された「承諾書」には「産業廃棄物中間処理施設(焼却・破砕・選別)及びリサイクル施設(焼成)及び収集運搬処理施設の設置を承諾致します」とあり、廃プラスチックや廃油などを24時間焼却処理すると記されていた。
まんまとだまされてしまった形の歴代町内会長は、承諾書に署名・捺印してしまったことを住民の前で涙交じりにわびた。
■地下水利用なしに驚き
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