土曜日, 4月 5, 2025

公益通報者保護法改正案のポイント(大渕愛子弁護士)

■組織を発展させる内部通報窓口のつくり方

2024年5月7日に初会合が開かれた「公益通報者保護制度検討会」の報告書が同年12月に取りまとめられ、その報告書を踏まえた公益通報者保護法改正案が本年3月4日に閣議決定されるに至りました。今国会中に成立する見込みです。

検討会では、事業者による不利益取扱いに対して刑事罰を科すべきという点や、公益通報と不利益取扱いとの因果関係の立証責任を通報者側から事業者側に転換すべきという点などが提案されていましたが、その後、改正案の主要な点は、次のようにまとまりました。

■通報を理由とする解雇及び懲戒処分を刑事罰の対象とし、個人には「6カ月以下の拘禁刑か30万円以下の罰金」を、法人には「3000万円以下の罰金」を科す。

■通報者が民事訴訟を起こした場合、通報後1年以内の解雇又は懲戒については、事業者側が通報と処分との間に因果関係がないことを立証する責任を負う。

■従業員数300人を超える事業者が通報対応業務従事者の指定義務に違反した場合に国が立ち入り検査等をすることができ、違反是正の命令に従わない場合には30万円以下の罰金を科す。

この改正案は、もちろん公益通報の実効性向上において一歩前進したものと評価することができます。しかし、通報を理由として退職勧奨、配置転換、ハラスメント等がなされることが多い実状に鑑みれば、そういった不利益取扱いに対しても刑事罰を科すべきではないかという意見も多く出されています。

ただ、いずれにしても実際に刑事罰を科すには、捜査機関による捜査を経て裁判所が有罪判決を下すというプロセスが必要であり、そのハードルは非常に高く、時間もかかります。そのため、より迅速に問題に対処するルートの拡充、たとえば、国の立ち入り検査の範囲を拡大し、かつ、国がそれらの業務に従事する人員を確保して体制を整えること等も検討に値すると考えられます。

平常時には通報者保護の必要性を理解していても、いざ不祥事が明るみに出そうになると、どうにか隠蔽したいという心情にかられ、間違った方向に舵を切ってしまう事業者が後を絶ちません。その間違った判断が如何にリスクの高いものであるか、事業者は認識を新たにする必要があります。

公益通報者保護法は、今後も段階的に改正がなされていくものと予測されますが、まずは、今国会にて成立する改正案がどのように運用されていくのかを注視しつつ、自社の通報窓口の見直しに着手することを強くお勧めして、本連載を締め括りたいと思います。


大渕愛子(おおぶち・あいこ)アムール法律事務所代表弁護士
2001年弁護士登録(東京弁護士会所属)。糸賀法律事務所にて企業法務の経験を積み、2010年独立。内部通報制度などの企業制度構築に関する講演・講義多数。

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