■組合員の残業拒否は正当 会社の措置による不利益も大きい
一定の残業を拒否する争議行為(拒否闘争)を行う組合に対抗し、会社は残業を命じない措置で対抗。この措置を不当労働行為とした救済命令の取消を求め会社が訴訟を提起しました。会社は拒否闘争が違法な争議行為と主張しましたが、判決は争議行為は正当と判断した上で対抗措置は不当労働行為に該当し、命令は適法と判断しています。
■判決のポイント
集配業務を担当する従業員の能率手当の算定で、時間外労働を行えば時間外手当相当額だけ減額されるという賃金体系を会社は採用。広島や東京支店など一部の組合員が合同労組に加入し、賃金体系の是正を求めた団体交渉を経て、平成29年10月に一部の残業を拒否する「拒否闘争」を開始。同年11月会社が組合員に対し、残業の可能性のある業務を命じない措置を執りました。
この措置が不当労働行為に該当するとした組合の救済申立てが労働委員会に認められたため、会社が再審査を申立て、これが棄却されたため行政訴訟を提起しました。
争点は、会社の措置が労組法7条1号と3号の不当労働行為に該当するか、その判断に当たって組合の拒否闘争が正当な争議行為であるか、です。
会社は命令が、拒否闘争が目的と手段が一致している違法な要求実現型ストライキであることを無視していること、その結果として拒否闘争に対する会社側の対応に不当に厳しい要件を課していると主張しました。
原審は対抗措置が行われた結果、組合員の賃金が減少していることを不当労働行為の不利益取扱いとして認定。
また、拒否闘争の目的を団体交渉の内容等から「賃金体系の改定による時間外手当の増額」にあるとしました。拒否闘争の態様には不明確な部分はあるが、組合員が拒否した業務の範囲が会社は容易に認識できたとも指摘。拒否闘争は割りに合わない残業を拒否する要求実現型ストライキであるとの会社の主張に対しては、残業拒否自体は目的ではない等と述べ、拒否闘争は正当な行為に該当するとしました。
対抗措置は必要かつ相当な範囲を超えた過剰なもので、業務上の必要性があったとはいえず不当労働行為の意思もあったというべきと述べています。
残業を抑制したことで組合員に経済的不利益を与え、10名のうち7名が脱退したことから、組合の「弱体を意図してされたものと推認される」として支配介入に該当すると判断しています。
2審は原審を維持し、拒否闘争は残業の回避を目的とするものとの会社の控訴理由を判断。拒否闘争が開始される前の要求を精査し「要求を自力執行の形で実現することを目的として行われる争議行為ではない」と断じています。
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■判決の要旨 拒否闘争の把握は容易 争議権の濫用に当たらず
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