■告発は合理性を欠かない 疑念抱くのも不合理ではない
漁協の職員が、海産物の放射性物質の検査数値の改ざん疑惑について週刊誌へ情報提供。さらには、補助金の不正受給の疑いがあると警察に告発。これらが虚偽の告発として懲戒解雇となり解雇無効を争いました。判決は、情報の内容から疑念を抱くことは不合理ではなく、告発は合理性を欠かないと解雇を無効としました。
■判決のポイント
令和4年、漁協に勤務していた原告は、週刊誌や警察に内部告発したことで懲戒解雇に。原告は漁協が県から提供されていた「しらすの試験操業に係る漁獲物等放射性物質分析結果」の数値を漁協が低く改ざんしているのではないかと疑いを持つようになります。なお、数値の書き込みはありましたが、改ざんとまでは断定されていません。
原告は週刊誌記者の取材に対応して、検査結果についての数値の書き込みの入った書面と会議の録音音声を提供。「茨城県加工シラス放射能“基準超え”数値はなぜ消えた」の記事に反映されました。
内部告発は真実性ないし真実相当性等から判断されますが、判決は週刊誌の記事から原告の告発が不合理に漁協の信用を低下させたかを精査していることに特徴があります。
まず、記事の内容ですが、疑惑が生じる程度の内容で一読した読者が、漁協が隠蔽目的で数値を改ざんしたとの印象を抱くものではないと指摘。「漁協の信用低下は仮にあるとしても限定的なものにとどまる」としています。被告は原告が漁協の信用低下を目的に、数値を改ざんしたとの虚偽の事実を週刊誌に告げたと主張しましたが、認められませんでした。
また原告が、記者に提供した書面には実際の放射性物質分析とは異なる数値の書き込みがあり、その内容について原告が「漁獲物の流通を確保するために、実際の放射性物質検査結果の数値よりも低い数値を公表したのではないかとの疑念を抱くことは必ずしも不合理なことではないというべきである」とも指摘。
取材に対して、分析結果と異なる数値が公表された可能性があるとの認識を回答しても「不合理に被告の信用を低下させるものであったとは認められず、解雇の有効性を基礎付ける客観的な理由たり得ない」と判断しました。
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