■ノルマと暴言で労災認定 必要ない親族名義のカードまで
信用金庫の労働者である男性が自殺し、労災の不支給処分を巡り家族が訴訟を提起しました。原審が認めなかったものの、本判決はノルマを果たすために家族名義で契約したカード会費を自ら負担する等の自爆営業や、上司の叱責が自殺原因の一つと認定。業務起因性が認められると判断し、不支給処分は違法で取り消されるべきとしました。
■判決のポイント
Aは東濃信用金庫の職員で、自死の前日にカードローン案件の引継ぎをしなかったことから、上司のB支店長から「横領」という言葉で厳しい叱責を受けていました。
Aの父親が、自殺はノルマや上司のパワハラ等が原因であるとして、労災の葬祭料を請求。不支給処分となり、その取消しを求めて提訴しましたが、原審が請求を棄却したため控訴しました。
本判決は、半年間の心理的負荷の程度を検証。ノルマの設定については、必要のない親族名義のクレジット・カードの契約締結、いわゆる自爆営業は「支店における営業目標が厳しいものであったことを示している」と指摘。支店長の「おまえの家、金持ちなんだから親に頼んでどうにかなるだろう」といった発言は自爆営業を推認させるとしました。
さらに「給料泥棒」との支店長の暴言が重なり、心理的負荷は「強」に近い「中」と判断しました。
「無駄に仕事してるふりしてるなら客をとってこい!」といったB支店長の罵倒の心理的負荷は「強」と判断。契約の失敗に対するB支店長からの「激烈な叱責」も心理的負荷は「強」。契約に至らなかったことは「達成困難なノルマ設定」として心理的負荷は「中」であるが、激烈な叱責の両者を一連として、その心理的負荷は「強」と指摘しました。
「横領」という言葉も金融機関の従業員にとって耐えがたいとして、総じて心理的負荷の程度は「強」で、発病と自死には業務起因性が認められるとしました。
■判決の要旨 このような状況に一般的な金融機関従業員は耐えられない
この情報へのアクセスはメンバーに限定されています。ログインしてください。メンバー登録は下記リンクをクリックしてください。