火曜日, 12月 10, 2024

過半数代表者選出での黙諾的な意思確認は有効か(脇 淳一)

■労務のアキレス腱 過半数代表の選出実務 最終回

脇 淳一(わき・じゅんいち)
▶特定社会保険労務士。社会保険労務
士事務所インサイス代表。1982年
東京生まれ。母の介護経験から社会保
障に興味を持ち、21歳で社労士試験に
合格。大手コンサルで経営を学び、社
労士事務所で実務を積む。2011年
に独立開業。相談業務特化の社労士と
して労務トラブルの解決・予防に注力。

過半数代表者の投票の際に、労働者が明確に意思を示さない黙諾的な意思確認は、無効になる可能性が高いことを前回説明しました。具体的には、「全ての労働者に対してメールで通知を行い、そのメールに対する返信のない人を信任(賛成)したものとみなす方法は、一般的には、労働者の過半数が選任を支持していることが必ずしも明確にならない」と見解が示されています(厚生労働省リーフレット「過半数代表者の適切な選出手続きを」)。


一方で、使用者側は推薦などに一切関与できないとは言い切れない裁判例が存在します。業務関連費用を労働者に負担させるために賃金控除の労使協定による天引きの有効性が争われた大陸交通事件(東京地裁2021年4月8日判決)では、賛成者の挙手を求めていなくても、選出は適法と判断されています。

■プロセス全体で判断

この事案では、全労働者が参加する安全衛生に関する会議(定例教育会)で、過半数代表者の立候補を募りましたが現れず、直後に開催された安全衛生委員会で、部長が乗務班長のA氏を従業員代表候補者として推薦しました。安全衛生委員会は、労使双方の代表が出席し協議する場でした。

翌月の定例教育会で、使用者側主導でA氏を過半数代表者としてはどうかと問いました。その意思確認の方法は、「賛成する人は挙手を」といった積極的な意思確認ではなく、反対者の挙手を求める、消極的な信任投票とも言える方法でした。数名の反対者がいましたが過半数には達しておらず、A氏は過半数代表者として選出されました。

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