木曜日, 11月 21, 2024
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発症前6カ月間の時間外労働は 国・岡山労基署長事件(令和5・9・26福岡高裁判決)

■経費清算書から行動を認定 ホテル宿泊が打ち合わせ時間の証拠

労働者が脳出血で死亡し、遺族が労基署に遺族補償給付を請求したが不支給処分となり、決定の取消しを求めた事案の控訴審。原審が認定した労働時間の計算方法を是正し発症前6カ月間の時間外労働は1カ月おおむね80時間と認定。連続勤務の状況なども加味して疾病についての業務起因性を認めました。

■判決のポイント

死亡した労働者は日本電気株式会社に勤務し、平成26年4月3日に右被殻出血を発症して死亡。遺族が岡山労働基準監督署長に対し、本件疾病は業務に起因するとして、遺族補償給付の請求をしたものの不支給処分となりました。当該労基署の処分の取消しを求め提訴しましたが、原審は請求を棄却。遺族が控訴しました。

ポイントは労働時間の集計方法です。処分庁が運転日報や経費清算書からは行動を認定することはできないとしたのに対し、本判決は運転日報や経費清算書、スケジュール表を精査し、始業終業時刻を割り出しています。

例えば、経費清算書にあったホテルの宿泊を、打ち合わせが深夜となったための急遽宿泊として、終電がなくなるまで打ち合わせが及んだものと想定。終業時刻を終電時間である11時とし、深夜までトラブル対応に当たる労働者の行動を認定しました。

この結果、発症前6カ月間における1カ月当たりの時間外労働時間数は平均で81時間に達し、発症前2カ月ないし5カ月間の平均時間外労働時間も70時間を超えることになり、「発症前の長期間にわたって疲労の蓄積をもたらす過重な業務に従事していたといえる」と指摘しました。

連続勤務や発症前1カ月の間に勤務間インターバルが11時間未満の日が7回あること、発症の9日前に18時間超の長時間労働があり、取引先のトラブル対応で精神的な負荷が大きいものであることも指摘。飲酒や喫煙状況も業務起因性を否定しないと判断しています。

■判決の要旨 疲労蓄積負荷看過できない リスクファクターもない

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