■労災認定に「原告適格」ないが 保険料認定で主張できる
労働者の労災支給が決定すると保険料が増額されることがある事業主が処分の取消を求める裁判が起こせるのかどうか。最高裁は労災支給と保険料は別の問題で訴える資格はないと判断。一方、保険料認定処分の不服申立で労災保険料の額について主張できるとし、事業主の不服申立を認めた初めての裁判となりました。
■判決のポイント
原告である事業主は、労働者が精神疾患を理由とした療養補償給付の支給決定を受けたことを不服として訴訟を提起。背景には労災事故が保険料に影響するメリット制があります。事業主は労災には該当しないと考えており、にもかかわらず保険料が上がるのは納得がいかないと訴訟を提起しています。
争点は労働保険料のために、労働者の労災の支給決定について争う資格「原告適格」が事業主に存在するかどうかです。
原審は、労災は被災労働者の利益を図ることのみが目的なので、「原告適格」がないと判断。一方、2審は保険料が上がる不利益に労災決定が関係するのだから、取消請求は可能と判断しました。
最高裁判決では、労災給付の行政処分は労働者の権利関係を早期に確定することが目的で、事業主の払う保険料とは別の問題であり、事業主は原告適格を有しないと判断しました。一方、労働保険料の額についても「申告又は保険料認定処分の時に決定することができれば足り」、「労災支給処分によってその基礎となる法律関係を確定しておくべき必要性は見いだし難い」とました。
2022年の国の報告書が労働保険料において事業主の不服申立を認めています。最高裁である本判決も、労災支給処分の取消を訴える資格はなくても保険料認定処分の不服申立て等で「客観的に支給要件を満たさない労災保険給付の額が基礎とされたことにより労働保険料が増額されたことを主張することができる」から手続保障に欠けない旨、述べました。
■判決の要旨 行政処分で労働保険料の法律関係まで確定されない
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