土曜日, 10月 12, 2024
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リファラル採用は万能?(山本圭子)

■連載:人事考現学(著者:山本圭子 法政大学法学部講師)

企業の人に会えば、若手の早期離職や人手不足の話題にことかかない。新卒採用では人材調達が間に合わず、中途採用の比率も高まっているという。先日、ある講座で、使用者の方から、思いがけずリファラル採用について質問があった。人材エージェントに支払う採用コストも高騰しており、社員が知人を紹介してくれて採用できたらインセンティブを払うリファラル採用を検討したいという。

そもそもリファラル採用は、従来型の縁故採用と違うのか。縁故採用には、経営者の親類や幹部の知人を連れてくるといったイメージで、他の従業員が「あいつは縁故採用だから」と噂するのはネガティブな意味合いとなる。

近年のリファラル採用は、これとは異なる新しい採用機会を模索するものだ。会社が求める人材を示して、一緒に働きたい人材を従業員らに推薦してもらい、その労に対し賃金、給料その他のインセンティブを支払う。職業安定法第40条では「労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第36条第2項の認可に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならない」とする。就業規則等に規定を設ける必要があり、「業」になるような高額報酬は想定されていない。採用後にすぐに離職した場合、紹介者のインセンティブをどうするかも難題だ。

リファラル採用にはリスクもある。類は友を呼ぶというように、従業員の同質性が高まり、多様性が損なわれる可能性がある。また自分のポジションを脅かす優秀な者を推薦するのではなく、使い易い、一緒に働いて楽という視点で推薦しては、小粒な人材が集まるかもしれない。

勧誘時に、従業員が、社外秘のプロジェクトの内容をうっかり話して機密漏洩になる場合もある。

従業員が転職の誘いをかけたものの、選考過程で合意に至らない場合、特に会社側から不採用とした場合に、当事者間にわだかまりが残る。 

人材エージェントを用いる場合には、バックグラウンドチェックの徹底等を要求するが、知人紹介であればそこが甘くなる。紹介者がインセンティブ欲しさに推薦する者の経歴や能力評価を盛ってくるかもしれない。前職で、退職後の競業避止義務等を負っていないかのチェックも欠かせないし、退職時期等の確認等も重要だ。冒頭の質問に対しては、リファラル採用の効果を過大評価せず、企業が主体的に人材の見極めを行うように答えた。

山本圭子 法政大学法学部講師

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