■定年後再雇用は「その他の事情」 労契法20条には違反しない
定年再雇用後の賃金が定年前の6割になったことについて原告は定年前の賃金を7割とする労使慣行が存在したと訴えますが、判決はその存在を否定。また減額された賃金は労契法20条に違反すると訴えましたが、定年後再雇用された有期契約労働者には「その他の事情」があり、かつ業務も軽減されているとして、訴えを退けています。
■判決のポイント
一般職だった原告は平成30年に63歳となり定年退職した後は1年の契約で再雇用され、令和2年に期間終了により退職しました。再雇用後の賃金は定年前の6割となり、賃金減額と65歳以降の再雇用拒否等について訴訟を起こしました。
原告は、定年後再雇用に際し賃金を定年退職前の7割とする再雇用契約が黙示的に成立したと主張。しかし、賃金が7割だったのは管理職の再雇用だった事情もあり、判決は労使慣行といえるためには、使用者側が「取扱を準則として従うべき規範として意識することを要する」と前置き。7割の慣行は労働者側においてすら意識されていたとはいえない、と労使慣行の存在を否定しました。
また、労契法20条は、有期と無期の労働者間の労働条件について、職務の内容の違いに応じた均衡のとれた処遇を求める規定とした上で、定年後再雇用された有期契約労働者は長間雇用が通常予定されていないこと、老齢厚生年金の受給が予定されていることは、同法が違法か否かを判断する「その他の事情」として考慮されるとしました。
原告の職務は配置、勤務時間、休日等の労働条件、責任の範囲に定年前後で変化はないが、業務が相当程度軽減されたのは明らかであるとしました。これらを総合勘案して定年前賃金の6割までの減額は労契法20条違反に該当しないと判断しました。65歳以降の再雇用契約拒否については、それまでの65歳を超えた再雇用が例外的な措置であり、65歳でも再雇用を継続する規範意識まで形成されていたとは認められない、としました。
■判決の要旨 職務の内容に変化はないが相当程度軽減されたのは明らか
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