金曜日, 9月 20, 2024
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カスハラ対応方針 定義・該当行為示し厳正対処

■接客伴う業種の大企業で対策進展

帝国データバンクが1万1068社の回答を集計した調査で、顧客などからの著しい迷惑行為、いわゆるカスタマーハラスメントの直近1年間の被害を尋ねるたところ、15.7%が「ある」と回答した。業種別では34.1%の「小売」、30.1%の「金融」、23.8%の「不動産」、20.2%の「サービス」の順で高くなり、規模別では「大企業」が21.0%と唯一2割を超えている。


被害の多いことが明らかになった接客を伴う業種、特に規模の大きい企業の対策が進んでいる。なかでもカスハラの対応方針を策定する動きが目立っており、7月末までの約1カ月だけでも高島屋(大阪府大阪市)をはじめ、全日本空輸(東京都港区)や日本航空(東京都品川区)、NTTドコモ(東京都千代田区)、KDDI(東京都千代田区)、損害保険ジャパン(東京都新宿区)などが公表に踏み切った。

各社の対応方針の構成は、ほぼ同じだ。「はじめに」で対応方針を策定した経緯を説明し、定義と該当行為例を列挙。その上で、具体的な対応策と社内で今後強化する取組を明確化している。

定義は、各社いずれも厚生労働省のカスハラ対策企業マニュアルを参考に作成。ほとんどが顧客の要求内容の「妥当性」に照らし、要求を実現する手段・態様が「社会通念上不相当」で、それにより「社員の就業環境が害されるもの」と定義づけているが、とりわけNTTドコモの定義(図)がわかりやすい。


該当行為例も、複数の社が同じものを掲げるなど類似している。多くの社が、「暴力(暴行、傷害)」などの身体的な攻撃、「威嚇・脅迫」などの精神的な攻撃といった典型例を網羅。他方で、全日本空輸と日本航空が「セクハラ(盗撮、わいせつ行為、発言、つきまといなど)」、KDDIが「許可のない業務スペースの立入り、アポイントのないオフィスの来訪」を明示するなど、業種の違いを鑑み独自の該当行為例を盛り込んでいる。

全日本空輸と日本航空の「カスタマーハラスメント行為例」から

「KDDIグループカスタマーハラスメントに対する方針」から

対応策については、社外向けと社内向けの対応に分けて具体化した。

社外向けの対応は、全社がカスハラと判断した場合に毅然とした対応を行い、厳正に対処する方針を打ち出した。特に悪質なものは警察や弁護士などと連携し、法的措置も辞さない覚悟を明記。例えば、高島屋は「合理的な解決に向けて話し合いを行」うとしつつ、カスハラと判断すれば「対応を打ち切り、以降の来店をお断りする」と明確化し、社外に向けて幅広く周知している。

一方、社内向けの取組として、相談窓口や報告体制の整備を示唆したほか、社員の心のケアにも目配り。また知識や対処方法、手順を標準化した「マニュアル」を策定した上で、「研修」の実施で再発防止に取り組む姿勢を明確化した。

高島屋グループ「カスタマーハラスメントに対する基本方針」から

このほか、カスハラ防止対策は多岐にわたる。ローソン(東京都品川区)は、店舗従業員のネームプレートの表示を実名の名字から「役職+任意のアルファベットまたはイニシャル」に変更。


2020年にカスハラを要因とする死亡災害が起きたポラスグループ(埼玉県越谷市)は、外部機関のカウンセリングサービスの充実を図っている。

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