■おんな流 おとこ流~仕事を訪ねて~(63)
三重県の津地方裁判所で民事部総括判事(裁判長)を務める竹内浩史さん(61)が7月2日、勤務地によって裁判官の給与に差があることは憲法に違反するとして国を相手取って裁判を起こした。現役の裁判官が国を提訴するのは極めて異例だと注目を集めている。(井澤宏明)
竹内さんが問題にしているのは、国家公務員の「地域手当」だ。物価が高い首都圏や都市部の公務員に支給される。人事院規則で民間の賃金水準を基礎として基本給の20%(1級地、東京23区)から3%(7級地、札幌市など)まで7地域に区分されている。
竹内さんは2021年4月、名古屋高裁から津地裁に異動。地域手当の支給割合が15%(3級地)から6%(6級地)に減り、緩和措置はあったが3年間で給与が約238万円減ったという。
憲法80条2項は、高等裁判所、地方裁判所など下級裁判所の裁判官の在任中、報酬を下げることを禁じており、訴状では減額された約238万円の支払いを国に求めている。また、「同一労働同一賃金」の原則にも反し「法の下の平等」を定めた憲法14条にも違反すると主張している。
■ヒラメ生む「地域手当」
提訴後、愛知県弁護士会館で記者会見した竹内さんは「地域手当」の弊害を問われ、もの言えぬ多くの裁判官を代弁して、こう吐露した。
「これだけ20%の差をつけられると、(裁判官も)みんな家族を養っているし、東京にいたいと思いますよね。人事に心理的に拘束されてしまう。裁判官たるもの、そうあってはならないんですが、人間弱いですから、地方に行きたくなくて心ならずも『ヒラメ裁判官』と呼ばれるような裁判をしてしまう人もいるのではないか。国家公務員みんなそうだと思う」
「ヒラメ裁判官」とは、海底で両目を上に向けて生活するヒラメのように、最高裁や裁判長など上の顔色ばかりうかがう裁判官を揶揄する表現だ。
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