■労務のアキレス腱 過半数代表の選出実務①
労務の現場において、理論と現実の乖離が大きいのが「過半数代表者の選出」です。SNSでもそう発信したことがありますが、これは疑いようのない事実だと考えています。昭和、平成の時代に比べ、その意識は高まっているとはいえ、法や裁判所が求める正しい選出フローと、実際に乖離が生じているケースが多いのが現実です。筆者は今年、社労士の実務経験20年目を迎えますが、関与前から過半数代表者の選出フローを完璧と評価できるレベルで選出していたケースは、非常に少ないのが実情です。
そもそも過半数代表者の重要性については、実態として昭和の時代から軽視されている傾向が伺えます。中小企業では社長と距離が近い経営側の人物を指名したり、単に協定書のサインをもらうためだけに協力を依頼する実態は、今でも存在していると考えています。
しかし理論上では、例えば労働基準法第32条において、1週40時間、1日8時間を法定労働時間として規制しているところ、当該事業場の過半数労働組合あるいは過半数代表者から合意が得られた場合に限り、当該事業場において、時間外労働の制限から一定程度の解放がなされることになります。つまり過半数代表者の合意がない限り、時間外労働命令は刑事罰が適用される法違反となり得ます。経営判断上において当たり前に織り込んでいる時間外労働命令は理論上、過半数代表者1人の判断によって覆される可能性があるということです。労使協定の締結が必要な事項は、協定の締結が実現できて初めて実行可能になります。あくまで例外です。
中小企業では、会社の経営に大きな影響を及ぼし、さらに言えば経営権に深く関与することを目的として、意図的あるいは戦略的に過半数代表者の立候補がなされるケースもあります。稀なケースではありますが、投票権を持つ労働者に到底、実現不可能な労働条件の向上や過剰な期待を持たせて票を集める勧誘行為によって過半数代表に選出されることも経験上、存在しています。
しかし実態は前述の通り、会社側が過半数代表者選出フローを軽視しているケースが多いです。軽視しているが故に理論と現実のギャップが生じ「怒り」へ転化する場合もあります。もう労働法は守りにくいから守らなくて良いという時代から、当たり前に守っていく時代へ変化しています。
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