■合理性否定されず変更は有効 パートタイム・有期法の対応が契機で
正規と非正規職員の格差を是正するため、正規職員の労働条件を不利益に変更したことの合理性が認められた事件です。変更は正規職員の人件費を非正規職員に充てたにすぎないのであって、改正パートタイム・有期雇用労働法への対応としても評価され、不利益の程度も大きくないと合理性が認められています。
■判決のポイント
令和2年4月1日に施行されたパートタイム・有期雇用労働法では、正規職員と非正規職員との間の不合理な格差が禁止され、説明困難な状況については是正する必要が生じました。
令和元年、病院側は、手当支給の趣旨が不明確であることから、説明可能な制度にすることを目標にしつつ、なおかつ手当の新設で人件費の総額を超えないようにする必要があるとして、扶養手当を廃止する一方で、子ども手当および保育手当を新設。さらには住宅手当を廃止して賃貸物件にかかる住宅補助手当を新設する方針を決定しました。
令和元年から翌年にかけて説明し、その理由として人材確保の中でも女性と若年層の確保が必要であるとしました。しかし、組合とは交渉を数回行いましたが折り合いがつかず、過半数代表者との間で同意を得て新規定へと変更しました。
判決は、就業規則の変更について「就業規則の変更を行わないと使用者の事業が存続することができないというような極めて高度の必要性が常に求められているということはない」と法改正への対応を理由とすることの合理性を認めています。
手当の目的を明確にする必要があったこと、人件費の抑制に配慮しつつ手当を組みかえる必要があったこと、変更した内容も若年層や女性の就労促進に即したものであること、特に、住宅手当の廃止については、女性と若者の人材確保という目的との関連性が認められると評価しました。その他、不利益の程度が少ないこと、激変緩和措置なども認められています。
■判決の要旨 変更を行う高度の必要性は 財政上の理由に限られない
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