改正公益通報者保護法が2022年6月に施行されてから約1年半。この間、ビッグモーターの保険金不正請求事件など内部告発への関心は高まる一方、企業の対応状況は道半ばだ。このほど帝国データバンクが発表した意識調査の結果によれば、「法律の内容を理解し対応している」企業の割合は8.8%にとどまった。
調査は10月後半に実施し、1万1506社の回答を集計した。「ある程度理解し対応している」と回答した10.9%をあわせ「対応している」19.7%の企業を、業界別・従業員数別に集計したのが下の図だ。
業界別では「金融」が56.5%と突出して高く、従業員規模数でみると「1000人超」で70.0%に対して「20人以下」では11.6%と規模に比例した対応状況となっていることがわかる。企業からの声として「小規模企業のため、必要性を感じていない」(不動産)、「零細企業には関係がない」(建設)などのほか、「大事なことだとは思うが、インボイス制度や電子帳簿保存法対応で手一杯」(看板・標識機製造)といった声もあった。従業員300人超の企業では従事者の指定など社内体制整備が義務づけられるが、「301~1000人」では対応割合が57.4%など、必ずしも高い割合とはいえない。
■窓口の効果「経営リスク未然防止」が7割
通報窓口の設置については、「設置している」企業は13.2%、「設置を検討している」企業の10.9%をあわせても計24.1%と、4社に1社程度だった。これらの企業に設置した効果(複数回答)を問うと、最多が「経営上のリスクの未然防止・早期発見」で69.8%、以降「法律上の義務を遵守できる」が59.5%、「従業員が安心して通報ができる」が53.7%などと続いた。
一方、公益通報の受付窓口を「設置する予定はない」企業42.1%に、その理由(複数)を尋ねると、「窓口がなくても法令違反などの問題があれば社内で共有される」が最多で51.9%と半数を超えた。以降「ノウハウがない」が34.5%、「適切な人材を確保できない」が30.4%などとなった。企業からも、「家族経営のため、必要性がない。法令違反をしないよう皆で気を付けている」(繊維・繊維製品・服飾品小売)といった意見が多数あげられていた。