■連載:人事考現学(著者:山本圭子 法政大学法学部講師)
今夏、芸能マスコミは、大手芸能事務所の創業者のタレントらへの性加害を大きく取り上げた。記者会見は、キー局各社が生中継をする事態となった。創業者の性加害は以前よりホモセクハラなどとして暴露本やゴシップ記事となり、裁判沙汰にもなったが、大手メディアではほぼ取り上げられずにきた。ところがイギリスのBBCテレビが今春、被害者の実名・顔出しで特集報道したことが、黒船襲来ともいうべきインパクトをもたらした。
当該事務所も「外部専門家による再発防止特別チーム」を立ち上げた。8月27日に公表された71ページに及ぶ報告書で、創業者の所業を「性加害行為」と表現したことは、それまで沈黙を守っていたマスコミにも少なからぬショックを与えた。同報告書は2011年に国連人権理事会で採択された「ビジネスと人権に関する指導原則」(以下、指導原則)を引用し、被害者救済、人権方針の策定、研修の充実、ガバナンスの強化といった人権デュー・ディリジェンス(以下、人権DD)に沿った対応を迫るものとなった。
これと前後して、国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会が来日し、日本国内における指導原則の履行の進捗状況に関する調査を行い、8月にステートメントを公表した。ステートメントの「メディアとエンターテインメント業界」の項目でくだんの性加害問題にも言及したため、大きく報道された。
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