■「悪化」は業務に起因する トラブルあった上司と関わることで
既に発病している業務外のうつ病の悪化について業務起因性はあるのか。判決は「発病」と「悪化」について分けて判断。発病については業務起因性を認めず、悪化については、「平均的労働者」の心理的負荷を検討。過去にトラブルがあった上司との関わりで心理的負荷が生じることは自然、と業務起因性を認めました。
■判決のポイント
人事系システムの保守、運用の業務を担当していた原告は、グループリーダーAのもとで業務に従事。平成23年4月にうつ病を発症して、同年7月に職場復帰し、平成27年4月にうつ病(悪化)と診断されました。同年12月に労基署に療養補償給付を請求したところ、不支給となり、再審査請求を経て平成31年に本件訴訟を提起しました。
本件では「発病」と「悪化」に分けて判断。発病については、リーダーAは厳しい指導をすることがあったが、原告のミスもあり、評価表の「上司とのトラブルがあった」に該当するが、業務指導の範囲を逸脱したものではなく、心理的負荷は「中」。時間外労働は1カ月最大で60時間程度で、業務起因性が認められないとした労基署の判断に違法はないとしました。
悪化については専門検討会報告書が、精神障害を発症して治療が必要な状態にあるものは、些細な心理的負荷に過大に反応するといった特性があり、判断基準として評価表上の「特別な出来事」が必要としているが、本判決は「平均的労働者」を基準としても差し支えないとしました。
同僚が業務から離れたことで原告の業務が増大し仕事量の負荷は「強」と判断。強い指導はなかったが、かつてトラブルがあった上司から再び指導を受けることは平均的労働者を基準としても心理的負荷を生じさせるもので、評価表「上司とのトラブルがあった」の「弱」ないし「中」としました。悪化は自然憎悪ではなく、業務に内在する危険が現実化したものと認めました。
■判決の要旨 「平均的労働者」基準とし業務の危険が現実化した
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