ニューロダイバーシティ(神経多様性)の概念が日本(経済産業省など)でも紹介されはじめました。我が国の人事管理においても、今後以下のような重要な影響をもたらします。
第一に、多様な人材の採用と活用の促進です。従来の日本企業では、協調性や画一的なコミュニケーション能力が重視される傾向が強く、発達障害や注意欠如・多動症(ADHD)、自閉スペクトラム症(ASD)などを持つ人々が不利な立場に置かれやすい状況がありました。
しかしこのニューロダイバーシティの理解が進めば、特定の分野において高い集中力や創造性、分析力を持つ人材が組織に新たな価値をもたらす存在として認識されるようになります。これにより、採用基準の多様化や職務のマッチング精度の向上が進みます。
第二に、評価制度や働き方の柔軟化が求められる点です。一律の評価基準や固定的な勤務体制では、多様な特性を持つ社員の能力が十分に発揮されません。ニューロダイバーシティの観点からは、業務成果だけでなくプロセスや個々の強みを反映した多角的な評価制度の導入が必要です。
また、リモートワークやフレックスタイム制、静かな作業空間の整備など、働きやすい環境の設計も重要になります。
第三に、管理職や同僚の意識改革と教育の必要性です。多様な脳の働き方を理解し受け入れる企業文化の形成には、管理職やチームメンバーのリテラシー向上が不可欠です。適切なコミュニケーション方法や配慮のあり方を学ぶことで、職場全体が包括的かつ生産的な環境になりえるのです。
以上のように、ニューロダイバーシティの浸透は、日本企業の人事管理において採用、評価、職場環境、教育の各側面で大きな変革を促す可能性があります。これは単なる障害者支援ではなく、組織の創造性と競争力を高める戦略的なアプローチといえるでしょう。

賃金システム研究所🄬所長 賃金改革のプロ・プラチナ企業育成のマイスター🄬
主な著書:「新訂2版 賃金システム再構築マニュアル」、
「赤津雅彦の賃金改革キーワード」、
「伸びる組織のための人事・賃金基礎講座」等
(注)「プラチナ企業育成マイスター」は登録商標です。


