土曜日, 7月 19, 2025

素材集めを制した者が給与計算を制する(杉野 愼)

■給与計算DXの先に何を見るか③

杉野 愼(すぎの・しん)㈱TECO Design代表取締役
▶1982年生まれ、広島大学大学院修了。医療系ITベンチャーでの営業を経て大手社会保険労務士事務所で給与計算やM&A、IT推進事業などに従事。2019年にTECO Designを設立し、1000社超の中小企業でのHRテック導入・運用実績を持つ。

給与計算の現場では、実は「計算」そのものより前段階の「素材集め」に工数の大半が割かれています。著者の感覚では月次作業の5~6割が手配作業に集中しており、ここで遅延や漏れが出ると後工程がすべて圧迫されるのが実情です。

給与計算の素材は大きくいって下の3種類しかありません。これらをどう手配するかがキーとなります。

  1. 勤怠データ 残業・深夜・休暇・シフト補正などが締め日を過ぎて確定。
  2. 身上異動を含む基本マスタ 入退社、所属変更、等級昇格、扶養状況などが税・社保に波及。締め日時点のものを反映。
  3. 汎用的変動項目 インセンティブ、旅費交通費、スポット手当、慶弔金など会社独自ルールで発生。締め日毎に処理することが多い。

■結局エクセルで…

最大のハードルは、データ原本が社内に散在していることです。例えば勤怠はメール添付のエクセル、身上異動はチャットの会話で済まされ、交通費や手当は紙の申請書──これらの最終的な統合は担当者の手作業に頼らざるを得ません。

社内でクラウドサービスを使っていても同様です。各部門へのルールを徹底しなければデータ更新のタイミングもそろわず、差分確認や催促を担当者が抱え込む構造が常態化します。

多くの給与計算システムは「入力済みデータを計算ロジック(給与計算ソフトウェアそのもの)に流し込む」前提で作られており、インポートや連携機能があっても元データ自体が整っていなければ機能しません。結果としてテクノロジーの導入範囲は限定的となり、泥臭い集計と突合せが人力で残り続けてしまうのです。

外注の場合でも、素材の手配そのものは会社内に残ります。エクセルにまとめて外部委託先へ――という手作業が残る限り、属人化とヒューマンエラーは解消しません。

■データベース基軸へ

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