土曜日, 7月 19, 2025
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周囲の支え、故郷守る 野田契子さん(「福岡産廃施設建設に反対する住民の会」元代表)㊦

■おんな流 おとこ流~仕事を訪ねて~(73)

自宅のすぐ下を流れる柏原川の河原にたたずむ野田さん(2025年4月10日撮影)

岐阜県中津川市福岡に住む野田契子さん(80)は東白川村の中学校を卒業すると、滋賀県長浜市の紡績工場で働きながら、工場内に設置されていた定時制高校で学んだ。(井澤宏明)

1960年代は映画の全盛期。映画館から帰ってきた生徒たちが「学割(学生割引)が効かなかった」と悔し涙を浮かべていた。企業内の定時制高校だったため、他の高校とは差別的な扱いを受けているらしい。

生徒会役員だった野田さんは、校長に直談判。工場長も兼務している校長は「天皇陛下みたい」(野田さん)な存在だったが、他の高校生と同じ扱いにするよう映画館に申し入れてもらい、学割が使えるようになった。

「おかしい、理不尽だと思うことには黙っていられない」という曲がったことが嫌いな気性は「小作のせがれ」にも関わらず地位のある人にもひるまなかった父親に似たようだ。「お父さんそっくり」と、弟や妹からも評されるという。

「住民運動」初心者だった野田さんだが、不正な経緯で地元への産業廃棄物中間処理施設の県の設置許可が下りていたことを知ると、動きは素早かった。

■ムシロ旗掲げ県庁へ

2010年3月29日、県庁に許可取り消しを求めて住民47人で押し掛けたときのことは今も語り草だ。昔使った筵(むしろ)が家庭に残っているのではないかと住民に呼びかけ、筵旗に「産廃反対」と大書して掲げ、テレビや新聞の取材を受けた。「山奥に住んでいる私たちをバカにしてはいけない、本気度を示さなきゃ」との思いだった。

嫌がらせも受けた。夜中に無言電話がかかってきたり、庭のキンモクセイの木に女性用の下着が花の咲いたように吊るされたり、コンドームの袋が大量にバラまかれたり。 

「怖いとか、どうしようとか思いませんでした。『来るなら来てみろ』みたいな感じで、いずれ痛い目に遭わせてやるからと。私、見かけよりすごくきついんですよ」

住民団体「福岡産廃施設建設に反対する住民の会」代表として慣れない携帯電話やパソコンと格闘。睡眠時間も削り、食欲もなくなるなど悲鳴を上げる体に連日のように点滴を打ってもらい、まさに「命懸け」で臨んだ。

その甲斐あって10年7月には県に設置認可取り消しを認めさせた。が、13年12月には環境省の裁決で「元の木阿弥」に。住民175人で原告団を結成し14年6月、国や県を相手取った裁判に突入。闘いは岐阜地裁が22年5月、県に設置許可の取り消しを命じ、県の控訴断念で終結した。

■「やれるところまで」

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