生産性向上に向けた投資として、社内コミュニケーションを生み出すために必要なものは何か――。プログラミング学習サービスを運営するProgate(東京都渋谷区、従業員数29人)では月に一度、リモートワーク社員を含めてオフィスに集まり、5人ほどのランダムなグループに分かれて仕事の成果や情報を共有し合う「ウィンセッション」を行っている。「『褒め合う』ことが決まりです」と話すのは同社の宮林卓也COO。「発言やコミュニケーションへのメンバーの不安や恐れを取り払うメッセージを、場をつくる側が明確に発信することが重要」と強調する。

■給与計算への感謝も
同社では、コロナ禍で導入したリモートワークを主としながらも、出社を含めたハイブリッドな働き方を推進。対面でのコミュニケーションを重視する考えから2024年、「コミュニケーションを生み出す場」としてオフィスを移転・刷新した。
開放的なカフェスペースを中心に配置し、オープンで偶発的なコミュニケーションが生まれやすい設計を大胆に取り入れている。前編で紹介したように、社外に向けた交流イベントなどでもオフィスを開放するとともに、日常的な社内コミュニケーションでも積極的に活用している。
「ウィンセッション」も、オフィス設計をいかしたコミュニケーション施策の一つだ(写真)。月1回、全社での対面セッションを行うほか、チームによっては週1回のセッションを行うこともある。

なぜ「褒める」場としているのか。宮林さんが説明してくれた。
「そうしなければ褒めない、という現実があるからです。特に中間管理職は一般的に、経営層などから『部下に甘いのでは』と思われないように、日頃から面と向かって褒めることが少ない。褒めることでメンバーの自己肯定感があがり、新たなアイディアや挑戦の意欲に結び付くことも多いので、実際にはとても有益なのです。また、例えば労務担当者に『給与計算ありがとう』と、日頃から伝えている人はどれだけいるでしょうか。“ミスがなくて当たり前”ではなく、淡々と行う仕事に改めて感謝し合う機会が、担当者のモチベーションにもつながります」
社員同士の関係性だけでなく、特にアイディアや創意工夫など生産性の向上にも直結することを狙いとしていることが分かる。一方で、褒め合うことを推奨するなど「場の設計」への配慮が、特に若年層に対して重要になっている背景について、宮林さんはこう解説する。
「『若者は主体性が低く、モチベーションが下がっている』といった風潮もありますが、若者自身は昔も今も変わっていないでしょう。ただ、周囲を取り巻く環境は大きく変化しています。具体的にはSNSの登場により、ちょっとした言動に多くの『いいね』がついたり、逆に炎上することもある。SNS空間で炎上しないように、自らの気持ちや考えを隠す術を身につけた人が増えている印象もあります。ですから場を設計する者として、参加者が批判や変な目で見られることを恐れることのないように、『誰かを責める場ではない』ということを明確にすることが大事なのです」
■権限移譲できる組織
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