金曜日, 4月 25, 2025

ハラスメント解決の分かれ目 その①「きく」(今津幸子弁護士)

今津幸子(いまづ・ゆきこ)
▶1996年弁護士登録。現在、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー弁護士。経営法曹会議常任幹事。人事・労務問題全般の助言のほか、セクハラ、パワハラなどハラスメント問題に関する社員研修、管理職研修なども数多く行う。

■裁判など法的手段避けるためにも

職場におけるハラスメントが起こってしまったとしても、なるべく裁判などに発展しない形で解決したいと考えるのは、事業主としては当然のことである。

もちろん、どんなに適切に対応しても、事業主の対応に被害者が納得しなかった場合に裁判などの法的手段に発展するケースもある。他方で、事業主の対応が異なっていたら裁判などにならなかっただろうと思われるケースがあるのも事実である。その一つの分かれ目は、ハラスメントの相談や申立てがあったときの事業主の対応であろう。

すべての事業主の法的義務であるハラスメント防止措置には、ハラスメントについて広く相談に応じ、適切に対応するために必要な体制整備(相談窓口の設置等)、相談者などのプライバシー保護に必要な措置、そして相談したことや事実調査に協力したことなどを理由とした解雇その他の不利益な取扱いはしないこと――などが含まれている。

これらの防止措置は、ハラスメントが起こることを前提に、「きく」ことが事業主の対応において非常に重要であることを示している。

■秘密裡の処理の末…

ハラスメントについての相談や申立てがあった場合、最終的に事業主としては、実際にどのような言動があったのか事実調査を行った上で、調査結果に基づき、被害者や行為者に適切な対応をとることが、防止措置として要請されている。

しかし実際には、ハラスメントの問題を従業員間のプライベートなトラブルとしてとらえて秘密裡に処理する、あるいは被害者が事実調査を希望しているのに事業主がなかなか事実調査を行わない、などの対応がとられることがある。

事業主がこのような対応をとると、被害者の被害感情や事業主に対する感情的な反発が増大し、訴訟などの法的手段に発展する可能性が格段に高まる。

ハラスメントの事実調査では、相談者や被害者から申告があった事実が本当にあったのかどうかを判断していくことになる。つまり、相談者や被害者からの申告が事実調査の出発点となる。よって、まずハラスメントの相談をする相談者が、安心して事業主に相談できる体制を整えることが重要といえる。

では、「安心して」相談できる体制、とは何であろうか。

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