機械工具卸売商社のトラスコ中山(東京都港区、従業員数3184人=連結)は1月から、自部署内で小規模なマネジメント業務を経験できる「マネチャレ制度」を始めた。同社が20年ほど続ける立候補型の責任者登用制度「ボスチャレンジ制度」に、より挑戦しやすくするステップと位置づける。両制度の背景には、役割や責任を担いたいという社員が機会を得ることのできる、透明性ある評価の仕組みがあるという。詳しく話を聞いた。

■ボスのやりがい体感へ オープンで公正な評価と共に
支店長や課長、センター長などの責任者を、同社では「ボス」と呼ぶ。ボスに登用されるには、ボスの代理として仕事を担うボスチャレンジ制度に立候補し、最長2年の期間にOJTでスキルや知識を身につけ、直属のボスや人事部門から評価を得た上で昇進・配属となる。今回始めたマネチャレ制度は、その挑戦をさらに促進・支援するためのステップと位置づける(下図)。制度の趣旨はボスチャレンジ制度と同様だが、参加できる年次条件を緩和し、Off-JTの実務研修などのカリキュラムも用意するなど、幅広い挑戦を促している点が特徴だ。

「ボス業務の一部を担うことで、マネジメントの楽しさや難しさなどのやりがいを体感する」――制度の狙いをこう説明するのは、人事部人材開発課の床島琢斗課長代理だ。自身は、1月から「ボスチャレンジ生」としてマネジメント業務を担っている。
「立場が変わることで、例えば研修講師としてもより伝える力が求められるなど悩むことも多い。責任者目線で物事を考えることが難しく、試行錯誤しながら仕事を進めています」と床島さん。実際にボス業務に携わるなかで苦労も多い反面、得られる経験値の高さも窺える。
同社がボスチャレンジ制度を導入したのは、2006年に遡る。制度導入の背景について、人事部の大谷正人部長はこう説明する。
「かつては、上長が自分の言うことを聞く、気に入った人を昇進させるといった考え方も当たり前のように残っていました」
社内での派閥につながるような人事を避けるためにも、01年の時点で公正な評価のための「オープンジャッジシステム(OJS)」を導入。主任以上の昇格について、共に働く社員の匿名の投票で可否が判断される仕組みを採り入れている。
ボスになろうと地道な努力を続けても、上長に気に入られた人が先に昇格していくのでは、モチベーションは上がらない。ボスチャレンジ制度への挑戦の環境を整えるためにも、OJSが重要な役割を果たしていることが分かる。
「責任者の登用に限らず、やる気と自覚を持った社員に機会を与える方針は、経営陣の根本的な考え方として、日々の業務を進める上でも重視しています」
では両チャレンジ制度で身につけるべき、マネジメントに求められるものは何だろうか。床島課長代理はこう話す。
「リスク管理のスキルやリーダーシップなど、あげればきりがありません。ただ根本は会社の考えや想い、当社が志として掲げる『人や社会のお役に立ててこそ事業であり、企業である』ということを体現できるかが大事だと考えています」
大谷部長は「会社の志や『ありたい姿』という能力目標がまずあり、それを仕事という形に落とし込み実現するために、課題解決力などボスに求められる資質がある。目指す方向性が分かりやすい会社といえるかも知れません」と述べる。
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