勤務先の不正を通報した者に対する保護が、大幅に強化される。このほど閣議で公益通報者保護法の改正案を決定し、国会に提出。公布から1年6カ月以内施行と時間的猶予はあるが、罰則の適用を飛躍的に増やすなど事業者への影響は甚大なものとなる。
まず公益通報を理由とした不利益取扱いの禁止に関し、「解雇等特定不利益取扱い」と定義づけた解雇と懲戒に限り、行政命令を間に挟まない直罰を導入。法違反した個人・法人双方の両罰とするが、個人に「6カ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」、法人に「3千万円以下の罰金刑」を科すなど、法人をより重くする法人重科を採用する。

併せて、解雇等不利益取扱いは民事訴訟上の立証責任を事業者に転換。公益通報を躊躇させない環境の整備が狙いで、通報後1年以内の解雇・懲戒を公益通報が理由としてなされたと推定する。
なお一般職の公務員などへの公益通報を理由とした不利益取扱いも禁じ、分限免職・懲戒処分した者も6カ月以下の拘禁刑か30万円以下の罰金の直罰を科す。フリーランスも業務委託関係終了1年以内まで保護の対象とし、契約の解除や取引数量の削減、取引の停止、報酬減額などの不利益取扱いを禁止する。
また300人超の事業者に対し、公益通報対応業務従事者の指定義務を強化する。現行の助言・指導、勧告、報告徴収に加えて、勧告に従わない場合の命令権限、立入検査権限を内閣総理大臣に付与。その上で、命令違反や報告懈怠、虚偽報告、検査拒否に対する「30万円以下の罰金」の刑事罰を新設している。

さらに、事業者に義務づけている公益通報に対応する体制整備の措置に加筆。体制整備の実効性の向上を勘案し、労働者に対する公益通報対応体制の周知の義務を課す。
このほか事業者に対し、労働者などに公益通報しない旨の合意を求めるなど、正当な理由のない公益通報を妨げる行為を禁止する。また正当な理由なく、公益通報者の特定を目的とする行為も禁止。

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