■外国人の移動制限し不法行為 手続費用超える部分は違約金
外国人労働者が在留資格の相談で訪れた会社で就労を開始。保管されたパスポートの返却を求めて訴訟を提起しました。判決は外国人の移動を制限するもので不法行為と認定。「技人国ビザ」取得手続の報酬を勤務により免除するとした契約も労基法違反として認定され、手続費用を求めた会社の請求を退けています。
■判決のポイント
フィリピン国籍の女性である原告は平成29年に留学生の資格で来日。平成31年被告となる行政書士法人Yで、技術や知識を要する業務に従事する外国人のための在留資格である「技人国ビザ」に変更する委任契約を着手金10万円、残金40万円で結びました。その際、ビザ変更時点から1年間勤務した場合には報酬の支払いを免除するとの契約もありました。
令和元年5月に原告はYでアルバイトとして勤務を開始。その際、パスポート等の書類をYが管理することになります。同年7月5日に技人国ビザを取得して契約社員に変更しましたが、2日のみ出勤し組合を通じて退職する旨を伝え、パスポート返還を求めましたがYは応じませんでした。
令和2年、パスポート返却拒否等を理由に訴訟を提起。Yに対する組合によるビラ投函、日本外国特派員協会等での原告による記者会見が行われたのも同時期です。
判決は、Yによるパスポートの保管管理について「外国人労働者の移動の自由を制限するものであって、公序良俗に反し許されない」と断じました。その理由を原告に問われた際の被告の「逃げちゃうでしょ」との答えも、母国に帰国することを防止する目的であることを自認している証拠であると指摘しています。

一方、原告の損害額も慰謝料の20万円にとどまっています。原告は技人国ビザ取得のための報酬50万円は不当に高額であり、実質は手続の報酬ではなく、違約金として労基法5条、16条違反である旨も主張しました。
判決は技人国ビザの申請には雇用契約書の提出が必要で、原告はYでの就労でビザ取得要件を満たすことも指摘。ビザ変更手続と雇用契約が密接に関連していることをあげ、ビザ変更手続報酬のうちの40万円は違約金である旨述べ、労基法16条違反と判断。40万円が未払いとしたYの報酬請求権を斥けています。
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