■新・働く人の心と体の心理学 第72回 著者:深沢孝之
コロナが収まったと思ったら、インフルエンザの流行が報道されています。2月上旬の現在、私の住む山梨では患者数は減少傾向ですが、昨年末はスクールカウンセラーとして私が勤める中学校でも学級閉鎖がありました。ただ閉鎖されたのは一学級だけで、コロナ前のインフルエンザの流行時には、いくつものクラスや学年ごとの閉鎖なんてことがよくあったので、大流行という実感はありません。皆さんのお住まいの地域ではどうでしょうか。
しかしインフルエンザの流行に伴い、またマスクを着ける子どもが増えました。感染対策として、手洗いとうがいの励行と同時にマスク着用がマスコミなどを通して強く推奨されており、親も教師もマスクをするので、子どもたちも当然マネをします。
ただ現実は、マスクをしようがしまいが、ワクチンを打とうが打つまいが、感染者は増える時は増え、減る時は自然に減っていきます。感染対策推奨者は、「マスクをしたからこの程度ですんだ」と言うかもしれませんが、これは証明のしようがありません。同じグループで同時期にマスクをする群としない群の比較なんてできないからです。
それに対して、一昔前に『バカの壁』という本がベストセラーになった著名な解剖学者の養老孟司氏と、テレビで活躍中の精神科医の名越康文氏が対談した『ニホンという病』(講談社)という本に興味深い指摘があります。
二人が日本のコロナ対策に疑問を投げかけるくだりで、「ウイルスがピンポン玉の大きさだとすると、マスクの網の目は本州くらいになる」というのです。数字に弱い私は、実際のウイルスとマスクの穴のサイズの正確な比較は分かりませんが、そういう話は方々で聞きます。そうだとすると、マスクが感染対策にならないのは明らかです。
養老氏は解剖学者であり、かなりな昆虫マニアでも知られ、人間は自然のリアリティに基づいて生きるべきだと主張している人です。名越氏は実はアドラー心理学の実践者であり、卓越した臨床能力の持ち主として知られています。私は昔まだ無名の彼のワークショップに参加したことがあり、テレビに出るようになってビックリしています。
この二人が言うことだから信用できる、と私は思っています。私たち日本人はコロナ禍でも今でも、「バカの壁」の中にいるのかもしれません。
■ウイルス防ぐのにマスクでは?
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