■おんな流 おとこ流~仕事を訪ねて~(67)
山梨県南アルプス市の沿線住民6人(提訴時は8人)がJR東海を相手どり同市内のリニア中央新幹線建設工事差し止めを求めて甲府地方裁判所に起こした裁判は今年5月28日、提訴から5年を経て判決が下された。(井澤宏明)
「主文 原告らの請求をいずれも棄却する」――。新田和憲裁判長の声が法廷に響いた。「(こんな判決なら)もっと早く出せばいいのに」「(昨年12月の結審から)半年も待たせて」。原告や支援者は、落胆を口にしながら法廷を後にした。
判決直後、雨の降る甲府地裁前で、原告代表の志村一郎さん(83)は報道陣の取材に応じた。
■まったく理解できない
「まったく理解できない。(山梨)実験線であれだけ欠陥が出ているわけですから、(本線では)それ以上にひどいことになる。(棄却は)理由がまったく分からない」
リニアは品川―名古屋間約286キロの9割近い約246キロがトンネルだが、残りの地上部約40キロのうち約27キロ(山梨実験線を含む)が山梨県内に集中している。実験線では日照や騒音、振動などによる被害が相次ぎ、岐阜県瑞浪市で現在起きているのと同じような水枯れも多発した。
南アルプス市の約5キロは、品川方面から名古屋方面へ北東から南西に高さ20~35メートルの巨大高架橋で通過する計画のため、多くの住宅地を斜めに横切る。
原告6人が所有する住宅や工場、農地をリニアは横切るか、至近距離を通る計画だ。裁判で志村さんたちは、リニア建設予定地になったために土地や建物の価値が下落して将来の生活設計が台無しになり、既に精神的苦痛を負っていると主張。
リニア建設中や開業後に、騒音、振動、低周波音、日照、電磁波の被害、眺望喪失や景観破壊などの「公害」が発生し、人格権(身体的人格権、平穏生活権)や財産権を侵害すると指摘。市内の工事差し止めと財産的損害への賠償などを求めた。
これに対し新田裁判長は判決で、リニア事業には「国際競争力の向上や災害対策等も見据えた国家レベルの大きな社会経済上の意義がある」として「高度な公共性、公益性が存在するものと認められる」とJR東海の言い分をあっさりと認めた。
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