個々の従業員の障害特性を踏まえて、能力を発揮しやすい業務をどう切り出せばよいのか――。アルバム制作など印刷・製本業の博進堂(新潟市、従業員数120人)は今年、「障害者雇用優良中小事業主認定」(もにす認定)を取得。同社で人事・労務を担当する清水隆太郎専務取締役は「繁忙期の業務円滑化や多能工の育成に向けて、もともとマニュアルの整備に力を入れてきた。それが業務の切り出しやすさにも役立っている」という。障害に関わらず長期的にキャリアを積むことのできる職場づくりについて、詳しく話を聞いた。
■マニュアルで見える化 先入観もたず「やってみる」
全国約3000校におよぶ卒業アルバム制作を印刷・製本まで一貫して手掛ける同社は、卒業式シーズンに向けた12月から3月の繁忙期に業務が集中する。臨時雇用のアルバイトもスムーズに業務に就けるように、従来から工程ごとに作業を見える化したマニュアルを整備(一例を下図に抜粋)。また社員が多様な業務に習熟する多能工化を進めることで、部署間の連携や生産性向上にも繋げてきた。
「例えば生徒さんの名前の文字入力や写真の色の補正、補正された写真データのトリミング(切り取り)など、作業を細かく切り分けてマニュアル化していることが、障害を持つ社員にとっても仕事への入りやすさにつながっている面はある」
清水さんは、最近受け入れた特別支援学校の実習生の例を紹介してくれた。
「弱視の障害を持つ実習生さんで、印刷業務は難しいかとも思いましたが、現場の社員らに相談すると『やってみましょう』と。確かに色の補正作業は難しかったのですが、タイピングはむしろ健常者より早く正確だった。我々も実際にやってみて分かったことです」
大事なポイントとして「先入観より、まず何でもやってみること。できることとできないことがお互いに分かることで、双方のミスマッチを少なくすることが大切です」と強調する。
同社では、特別支援学校の実習生受入れを継続的に実施。「近隣の学校を中心に、毎年1~2人ほど受け入れを行っています。前出の実習生は1週間の実習期間の後、手応えを感じたのか再度2週間実習に来てくれました」と話す。
職場の理解醸成にも繋がっていることが窺えるが、こうした職場づくりの取組みのきっかけは、約20年ほど前に遡るという。
「当時、障害者として雇用した方が職場と折り合いがつかず、退職に至ったことがありました。その反省のもとで会社としてマッチングのための体制づくりを進め、新たに聴覚障害のあるデザイナーを雇用。周囲のメンバーはコミュニケーションが取りやすいようにと、自主的に手話学習会などを開いて職場環境づくりを進めました。彼女は20年近く勤続しており現在も活躍しています」
■理解しつつ特別視せず 内容ごとに相談先を
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