水曜日, 12月 4, 2024

過半数代表の選出ルール誤認のリスク(脇淳一)

■労務のアキレス腱 過半数代表の選出実務③

脇 淳一(わき・じゅんいち)
▶特定社会保険労務士。社会保険労務
士事務所インサイス代表。1982年
東京生まれ。母の介護経験から社会保
障に興味を持ち、21歳で社労士試験に
合格。大手コンサルで経営を学び、社
労士事務所で実務を積む。2011年
に独立開業。相談業務特化の社労士と
して労務トラブルの解決・予防に注力。

過半数代表者の選出は民主的な方法による選出が必須となりますが、そもそも「投票権の保有者と選出を行う単位」も正確に把握する必要があります。この誤解によって、潜在的に違法状態や未払い賃金が生じるケースがあります。

労使協定を適用する「事業場ごと」に過半数代表者を選出する必要があり、所属労働者が過半数の分母となるため、法人単位での選出ではないという点に注意が必要です。これは、関連規定の主語が「当該事業場に」と、事業場を主語として規定されており、裁判所もこの前提で判断をしています。

■誤解で未払い賃金発生

ドワンゴ事件(京都地裁平18・5・29判)では、誤った運用による未払い賃金請求が認容されました。東京本社の過半数代表者と締結した専門型裁量労働制に関する労使協定が、大阪開発部の労働者へそのまま適用されていました。つまり、同社大阪事業場単体においては、過半数代表者の選出がなされておらず、所轄労働基準監督署へ労使協定の届け出もされていませんでした。

京都地裁は、「大阪開発部を単位として専門型裁量労働制に関する協定された労使協定はなく、したがって本件裁量労働協定は効力を有しないとするのが相当」と判示しました。当該労使協定は大阪事業場の過半数代表者と締結し、所轄の労基署長に届け出る必要があるとされ、専門業務型裁量労働制の適用を認めず、時間外労働、深夜労働にかかる割増賃金として計62万円余りの支払いを認め、付加金の支払いも命じています。

これは原告だけの金額であり、潜在的には現社員への説明、清算や債権放棄交渉などの対応負担もあったものと推測できます。

■選出フローの社内共有

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