■新・働く人の心と体の心理学 第64回 著者:深沢孝之
この3月下旬、メジャーリーグのエンゼルスからドジャースに移籍した大谷翔平選手の通訳、水原一平氏が違法賭博に手を出して多額の借金を抱え、大谷選手が返済の肩代わりをしたのではないかという疑惑のニュースは、日本中を震撼させました。
よく聞くと賭博をしたのは大谷選手ではなく水原氏のようですが、これによって純粋に野球に打ち込む青年というクリーンなイメージの大谷選手に大きな汚点がつくかもしれない、場合によっては刑事責任を問われるかもしれないと不安に包まれた大谷ファンは多かったのではないでしょうか。それまでの日本の報道は大谷選手を応援し賛美することばかりで、突然の結婚発表もあり、明るい話題一色でした。それがこのスキャンダルで一変してしまいました。
我々日本人のほとんどは、彼が賭博に手を出すタイプではないと、直接の知り合いでもないのに信じていると思いますが、現地アメリカでは必ずしもそうではないようです。疑惑があればきっちりと批判するメディアの姿勢が続いていると聞きます。
大谷選手は会見をして身の潔白を主張し、問題は水原氏にあると訴えました。この原稿を書いている4月上旬は一時期の過熱報道は収まった印象ですが、まだわかりません。
この騒動の中で心理臨床家の私として引っかかったのは、アメリカのギャンブル事情とギャンブル依存症という言葉でした。
■ギャンブルには歴史 人間の本性に根差し
アメリカにおいては、スポーツ賭博は違法である州と合法である州とわかれているそうで、ネットで調べた限りでは38の州で合法、12の州で違法とのことです。ちなみに先進7カ国(G7)でも、日本以外の国ではスポーツ賭博は何らかの形で合法化されています。大谷選手と水原氏がいるカリフォルニア州は違法だから問題になったといえそうです。
もし2人が合法の州で生活していたら、どうなっていたでしょうか。合法の州で合法のやり方でやっている分には罪になることはないはずです。ただ、大谷選手の口座から水原氏が勝手にお金を引き出していれば、窃盗か横領の罪に問われるでしょう。もし大谷選手が友人である水原氏に懇願され、自ら借金の肩代わりをしたとしたら、それ自体は犯罪にならないことになります。ニューヨークっ子は、「オオタニはドジャースなんかに行くからだ。ヤンキースに来てればよかったのに」と思っているかもしれせんね。
依存症の治療をしている私からすると、当事者のギャンブルの負債を身内や他者が肩代わりをするのは好ましくありません。「とりあえず返しておくから、もう二度とするなよ」と諭しながら、親が借金を返済するなんて話はたくさんありますが、それで本人がよくなることはほとんどないようです。本人はホッとしてしばらくはギャンブルに手を染めないでいますが、いずれ再発してしまうのです。依存症が病気であるといわれるゆえんです。
周囲は、借金はその本人の課題として突き放しながらも、回復を応援する姿勢が大切です。もし大谷選手が水原氏から相談されたとしたら、「ちょっと待って」と代理人の他に精神科医を呼んだりして、みんなで対応を話し合うことができたかもしれません。
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