月曜日, 5月 6, 2024

コロナ禍でキレイがエスカレート

新・働く人の心と体の心理学 第60回 著者:深沢孝之

新型コロナウイルスが2類から5類になったことで、社会はコロナ前の状態に戻ったように見えます。私はこの原稿を11月の連休中に書いていますが、たくさんの人が観光地に押し寄せているようです。ニュースでは、私の住む山梨に向かう中央高速道路は大渋滞です。街に出てみると、マスクを着けていたり、店の入り口にあるアルコール消毒をしている人は大分少なくなってきたとはいえ、3、4割はいるように見えます。インフルエンザ対策なのかもしれませんが、もしかしたらコロナ禍で身に沁みついた清潔志向が続いているのかもしれません。

私は最近、強迫性障害の相談が増えていることを感じています。特に不潔恐怖に関する内容です。精神科や心療内科では確実に増えているという話を聞きますし、スクールカウンセリングで中学校に行くと不登校の相談の中に、手洗いや消毒がやめられないという子どもの相談が入っています。強迫性障害と診断されていなくても、うつ病や統合失調症の人が、周りが汚れていると思ってしまって外出できなくなったというエピソードも聞きます。元々きれい好きだったり、不安になりやすい人は、コロナ禍で消毒がエスカレートしてコントロールできなくなりやすいようです。

強迫症状とは不合理とわかっていてもやめられない行動、例えばトイレの後に手が汚れたか気になるために1時間以上も手を洗わないと気がすまないとか、外出先から帰ってくるとまず服を全部脱いでシャワーを長く浴びて、カバンや持ち物を執拗に消毒するようなことです。そのために日常生活に支障をきたしてしまいます。自分が不安でたまらないので、家族にも同じことを強要する「巻き込み型」もあって、家族が疲弊することもあります。不潔恐怖によるこういった症状を、「洗浄強迫」といいますが、他にも家のドアの鍵を閉め忘れたか気になるために何度もドアを回して確かめても安心できず、外に出られなくなったり、運転していると誰かを引いてしまったのではないかと気になって、何回も通ってきた道を戻って確認しないとすまなくなり運転できなくなったりする「確認強迫」など、多彩な症状があります。

治療は薬物治療が中心ですが、私のような心理職が認知行動療法などをして症状の軽減を目指すこともあります。強迫症状に有効とされる「曝露反応妨害法」という方法が開発されています。お困りの方は専門家に相談してください。

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