労働者の約10人に1人が行う一方で、容認する企業がすでに5割を超えているとされる副業・兼業。容認する企業割合は規模が大きいほど高いが、制度を厳格に設計・運用している共通点がみられる。
厚生労働省がまとめた副業・兼業に取り組む企業11社の事例集によると、まず制度設計において全11社が「本業に支障のある副業・兼業」「競業や利益相反に当たる副業・兼業」を原則禁止と規定。実施のプロセスについても、申請書や誓約書の提出を求めた上で、人事部等で審査、承認を行っていた。
申請書の記載事項は、副業・兼業先での業務内容や実施期間・時間数・頻度、雇用または非雇用かの雇用形態が多い。自社での勤務に影響しないように、時間数・頻度を厳しく審査する企業、勤務年数に要件を設定する企業がある一方、同業他社での副業・兼業を一律禁止とせず、業務内容から承認の可否を判断しているレアケースもあった。
雇用での副業・兼業を認める9社のうち、法定外の労働時間をあらかじめ定めておくことで簡便に労働時間を管理する「管理モデル」導入企業は4社。意外にも、労働時間を定期的な自己申告で把握して、原則通り通算して管理する企業が5社で多かった。
管理モデルを導入する4社はいずれも、社内ルールで副業・兼業の労働時間の管理を「管理モデルによる」旨を明確化。人事部などから副業・兼業先に接触する企業はないが、導入時に労働者に管理モデルを説明し、副業・兼業先での労働時間の上限設定について話し合っていた。副業・兼業先の1カ月の労働時間の上限については、1社が21時間、2社が30時間、1社が35時間に設定している。
一方、管理モデルを導入しない企業は5社全てが、「副業・兼業先での労働時間30時間以内」「自社の時間外労働の時間との合計が80時間以内」といったルールを設定。実際に副業・兼業の実施時間を、1カ月に1回または毎回、自己申告で管理していた。
健康管理について、敏感なのも共通点だ。一定の時間で線引きし、医師の面接指導を受けさせたり、副業・兼業時間を減らすよう本人に直接働きかける事例が多い。