
1996年弁護士登録。現在、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー弁護士。経営法曹会議常任幹事。人事・労務問題全般の助言のほか、セクハラ、パワハラなどハラスメント問題に関する社員研修、管理職研修なども数多く行う。
■ハラスメント対応の術を身につける 第10回
今回は、パワーハラスメントを受けたとする労働者の主張をそのまま裁判所が認定しなかった事例を紹介したい。
■普段の関係性も考慮 直接注意も脅迫なし
一つ目は、損保ジャパン調査サービス事件(東京地裁平成20年10月21日判決)である。これは、Xが、上司Y2(Xの直接の上司ではない)から「てめー、一体何様のつもりだ。責任を取れ。自分から辞めると言え」などと退職を強要されたり、「てめえの親父にも迷惑がかかるんだぞ、いいんだな」との脅迫的言辞を受けたり、度々「俺が拾ってやったんだから感謝しろ」と威圧混じりに言われたりしていたことなどからPTSDに罹患し、休職を余儀なくされたと主張して、Y2と会社に対して損害賠償などを求めた事案である。
判決によると、Xは自尊心と正義感が強いが、激昂しやすく言葉遣いは乱暴で協調性に欠け、上の者に対しても自分の主張をはっきり述べ一切曲げない性格とのことで、対内外の対人トラブルを多数起こして始末書も多数回提出しており、当時担当していた地区のディーラーや修理工場に嫌われてほとんど仕事ができない状態であった。
他方、Y2は体も声も大きく話し方にはやや威圧感があるが、ざっくばらんな感じで部下の面倒見が良く、部下からも慕われていた。またY2はXの採用当時人事部長代理で、採用面接からXに関わった縁もあってか、XはY2に直接会話したりメールを送るなど、むしろ普通以上に親しい関係であった。
裁判所は、Y2がXに対し、Xが起こした修理工場とのトラブルについて直接注意はしたが、そのトラブルの前年のXに対する評価で、Y2が「(Xは)良いものを持っており時間をかけて教育したい」とコメントしていることなどからすれば、Xが主張するようなY2の言動は認められないなどとして、Xの請求を棄却した。
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