■おんな流 おとこ流~仕事を訪ねて~(70)

岐阜県各務原市の水道水源地から発がん性が指摘される有機フッ素化合物「PFAS」が高濃度で検出されていた問題を巡り市民団体を結成し活動を始めた小川麻実さん(51)は2024年3月末、県立各務原西高校の養護教諭を退職した。(井澤宏明)
30年間勤めてきた保健室で、社会や家庭の重荷を背負って訪れる生徒たちと接し「社会の縮図」を目の当たりにしてきた。新型コロナウイルス対策に振り回された3年間に一息ついたところで襲ってきたのがPFAS対策を巡るごたごただった。
「もう嫌気がさしたというか、ちょっともういいかな、みたいな」。50歳を迎え、2人の子どもも大きくなった。「体力的にも落ちていくし、やりたいことは後回しにせずに、やって後悔した方がいいかな」
水道料金の減免や浄水器購入の補助、希望者への血液検査などを求め小川さんたちの会が市に提出した要望書に浅野健司市長は24年3月、ほぼ「ゼロ回答」で応じた。
一方、「岐阜県民主医療機関連合会」は23年10月から、希望する市民を対象に無料で血液検査を実施。汚染が判明した三井水源地を利用する市民のPFOSとPFOA(PFASの代表的物質)の血中濃度は1ミリリットル当たり平均32.2ナノグラムと別の水源地を利用する市民らと比べ2.4~2.8倍もあることが分かった。
■血液検査結果に驚き
自身の血液検査の結果に小川さんは驚いた。20年余り前に各務原市に引っ越してきた自分よりずっと長くこの地に暮らしてきた人たちよりも数値が高かったからだ。
24年12月1日に放映されたNHKスペシャル『追跡“PFAS汚染”』では、小川さんが「親としての責任とか後悔とか。もっと調べれば、もっと違う土地に住めたんじゃないかなとか、そういうことを思ったりする」と心情を吐露する場面がある。
「住みたい土地を選ぶときに、学校が近いとか、買い物がしやすいとか、通勤のこととか、どうしても気にするじゃないですか。水道水がどこから供給されているとか、そんなことまで全然、気にしなかった」と、転居してきた当時を振り返る。
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