木曜日, 11月 21, 2024
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森下氏、「感想述べただけ」 NHKかんぽ不正番組介入

NHKの報道番組「クローズアップ現代+」が取り上げた、かんぽ生命保険による不正販売問題の続編取材をめぐり、NHK経営委員会が上田良一会長(当時)に厳重注意した番組介入事件。市民114人が注意した際の議事録や録音データの開示などを求めた訴訟で、被告の森下俊三委員長(当時は委員長代行)と中原常雄・経営委員会事務局長、原告の長井暁氏(元NHKチーフプロデューサー)に対する尋問が6月7日、東京地裁であった。経営委員会で厳重注意を主導したとされる森下氏は「感想を述べただけ」と突っぱねた。尋問でNHK側は何を証言したのか。番組介入問題の経緯を探った。(臺宏士・ライター)

長井暁氏(右)は記者会見で「NHKが2019年10月時点で議事録の粗起こしを作っていたとすれば、監査委員(高橋正美氏)を騙していたことになる」と指摘した。左隣は、澤藤大河弁護士=2023年6月7日、東京・霞が関の弁護士会館で(撮影/臺宏士)

■元郵政局員が証言

きっかけは2018年4月24日に放送された「郵便局が保険を〝押し売り〟!? 郵便局員たちの告白」。高齢者を狙った保険の不適正営業が行われているという声が「クロ現」に寄せられたことを受けて取材が始まった。番組案内によると、SNSで情報の提供を呼び掛けたところ、不当な内容の契約をさせられる被害に遭った人たちだけでなく、加害者側の郵便局関係者からも300件以上が集まったという。「高齢者の場合、だましやすい」「ノルマに追い詰められて、詐欺まがいで契約させる」。「オープン・ジャーナリズム」として放送前に取材していることを視聴者らに告知して情報を集めるというネット時代ならではの試みを組み合わせた番組づくりで、元郵便局員の声を拾った内容は大きな反響を呼んだという。

■森下氏の自作自演?

NHKの最高意思決定機関であり、執行部を監督する役割を負う経営委員会による番組介入はこの番組の続編取材で起きた。日本郵政側へのインタビューの交渉にあたった番組責任者の「番組制作と経営は分離されており、会長は番組制作に関与しない」との発言に不満を持った鈴木康雄・日本郵政上級副社長(当時、元総務省事務次官)は、「放送法で番組制作・編集の最終責任者は会長であり、NHKのガバナンスが全く利いていないことの表れ」と上田良一会長(当時)に抗議。この結果、18年8月の続編の放送は見送られた。

その後、取材の継続を知った日本郵政の鈴木氏は、同年9月25日に総務省が監督するNTT西日本社長を務めた旧知の森下氏を訪ね、森下委員長から経営委員会宛てに文書で申し入れるよう助言を受けた。抗議文は、日本郵政、日本郵便、かんぽ生命の3社長連名。経営委員会で森下委員長は、次のような発言をして取材手法を批判した。「極めて稚拙といいますかね。取材はほとんどしてないです」「極めてつくり方に問題があると思うんだ」「適切な取材のあり方というのは、経営委員会でも意見を言うべきだと思うんですよね」――などと番組内容の是非について日本郵政側の主張に立って議論を主導した。その一方で森下氏は自作自演ともいえる行為について委員会では一切、報告していない。

鈴木康雄・日本郵政上級副社長(当時)と面会し、経営委員会へ連絡するよう助言したことを認める答弁をした森下俊三・NHK経営委員会委員長代行(同)=2019年11月19日、衆議院総務委員会で(衆議院TVインターネット・中継ビデオライブラリから)

日本郵政の真意を認識していた委員もいた。村田晃嗣・経営委員長代行(当時は委員、同志社大学法学部教授)は「やっぱり彼らの本来の不満は内容にあって、内容については突けないから、その手続論の小さな瑕疵のことで攻めてきてる」と指摘していた。

(経営委員会でのこれらの発言内容は、市民が提訴=21年6月=した翌7月に経営委員会が開示した「議事録」の粗起こしから判明した。放送法41条は経営委員長に議事録の作成と公表を義務づけているが、経営委員会は拒否し、当初は市民らの請求に「概要」のみの開示にとどめた。元裁判官や弁護士らでつくるNHKの第三者機関「情報公開・個人情報保護審議委員会」が審議した結果、20年5月と21年2月の2回にわたり、「議事録の全面開示」と答申を受けながら拒み続けた)。

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