■M&Aから学ぶ労務管理―100年企業を目指す実践編⑤

TRY―Partners㈱代表取締役。社会保険労務士。東京都社会保険労務士会・千代田支部・開業部会委員。経営者のパートナーという役割を使命とする社労士事務所も運営。迅速で丁寧なデューデリジェンス(労務DD)には定評がある。M&Aシニアエキスパート。
M&Aによる事業拡大の第一歩を踏み出した矢先、退職する従業員から「未払い残業代として1千万円支払ってほしい」と言われたら身の毛もよだつことでしょう。
2020年の法改正により、残業代請求の消滅時効期間が延長し、中長期的な時間軸において突如として請求されるリスクが高まっています。
M&A、とくに株式譲渡型では、会社そのものは存続するため、従業員との雇用契約や未払賃金債務も含めてそのまま買主に引き継がれます。つまり、M&A前に発生した未払い残業代も、会社に残存する以上、最終的には買主の責任で支払う必要があります。
一方、事業譲渡型のM&Aであれば、原則として未承継の債務は買主に引き継がれません。下表は両者の相違点です。

大規模企業のM&Aでは、本件が企業全体の財務に与える影響は軽微ともいえますが、中小企業のM&Aでは状況が違います。すなわち、1千万円規模の債務でも、利益を吹き飛ばすには十分な起爆剤となり得ます。
■残業代請求の備え
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