■連載:人事担当者がわかる最近の労働行政
去る6月26日、欧州議会の雇用社会問題委員会に、「職場におけるデジタル化、人工知能及びアルゴリズム管理に関する欧州委員会への勧告」案が提出されました。これには付属文書という形で「職場のアルゴリズム管理に関する指令案」がついていて、内容的にはこちらが中心です。
EUでは、立法機関たる欧州議会には立法提案をする権利はなく、指令案を出せるのは欧州委員会だけなので、こういういささか回りくどい形式をとっているのですが、要するに議員立法の法案みたいなものだと考えていいでしょう。
職場のアルゴリズム管理への規制としては、昨年10月23日に正式に成立した「プラットフォーム労働における労働条件の改善に関する指令」が、プラットフォーム労働遂行者に限って、個人データ保護や意思決定システムの透明性等を規定していますが、他の労働者には及びません。しかし、近年のAIの発達により、あらゆる職場でアルゴリズム管理が用いられるようになり、欧州労連などは法的対応の必要性を叫んでいました。今回の勧告案は、それを受けたものということになります。
プラットフォーム労働指令が雇用関係のあるプラットフォーム労働者だけでなく雇用関係のない者も含むプラットフォーム労働遂行者まで含めてアルゴリズム管理規制の対象にしていたことに倣って、今回の勧告案は労働者と一人自営業者双方を対象としており、これを裏返せば使用者とサービス調達者を義務づけの名宛て人にしていることになります。
規制の内容はプラットフォーム労働指令を若干補正した形になっています。すなわち、透明性と情報入手の権利(第3条)、協議(第4条)、禁止行為(第5条)、人間による監視と再検討(第6条)、労働安全衛生(第7条)、権限ある国内機関の責任(第8条)という条文立てになっており、中でもプラットフォーム労働指令と同様、人間による監視と再検討に重点が置かれています。
以下では、勧告案付属指令案の本文の主要部分を翻訳して紹介しておきます。
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