
▶1996年弁護士登録。現在、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー弁護士。経営法曹会議常任幹事。人事・労務問題全般の助言のほか、セクハラ、パワハラなどハラスメント問題に関する社員研修、管理職研修なども数多く行う。
■ハラスメント対応の術を身につける 第4回
ハラスメントの相談や申立てがあり、事業主が事実調査で被害者が主張するハラスメントの事実が認定できた場合、行為者や被害者に適切な措置を取る必要がある。これは事業主に法令上義務付けられているハラスメント防止の「雇用管理上必要な措置」の一つである。
行為者への措置としては、懲戒処分、人事上の措置(配置転換など)、再発防止に向けた教育などがある。一方、被害者への措置としては、メンタル面を含めたケア、損害賠償などの要求があった場合の対応がある。加えて、社内全体における再発防止に向けた措置(例えば社内周知など)もとることになろう。
■懲戒処分の協議は複数人で慎重に
行為者への措置としては、まず懲戒処分を検討することになるが、懲戒権が濫用された場合は懲戒が無効となり(労働契約法15条)、さらに懲戒解雇や諭旨解雇の場合は解雇権の濫用(労働契約法16条)の問題も生じるため、懲戒処分は行為の内容などに応じた適切なレベルとする必要がある。
行為者の属性(役職、所属部門など)や行為の悪質性、重大性を踏まえて「今検討している処分より一段軽い処分ではなぜダメなのか」を考えたり、他の類似事例とのバランスを考慮したりして、可能であれば複数人で協議して、適切なレベルの処分を決定したい。
■人事上の措置と懲戒処分の違い
人事上の措置としては、降格、降職、配置転換などが考えられる。懲戒処分としての降格や降職は、一般的には、解雇処分一歩手前の重い処分と捉えられているが、懲戒処分としての降格・降職に至らない場合でも、人事上の措置として降格・降職が行われることはある。これは、懲戒処分がハラスメント行為に注目して企業秩序違反の観点から判断されるのに対し、人事上の措置は行為者を今の役職や部門に置いておくことが適切か否かという行為者の適格性の観点から判断されており、両者の目的が異なるからである(表)。

ハラスメント行為自体は軽いレベルの懲戒処分が適切であっても、そのような行為を行う人が今の役職・地位を務めることが適切とはいえない場合は、人事上の措置として降格・降職が行われることは十分にありうる。
■配置転換の目的は物理的に離すこと
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